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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「豊頃・スライブハーツ」

鈴木健司代表取締役

1.6代目として牧場を継ぎ、規模3倍に
 JR豊頃駅から車で5分の距離に位置し、280頭の乳牛から年間2850トンの生乳を生産する。100ヘクタールの敷地は62ヘクタールの牧草地と38ヘクタールの飼料用トウモロコシ畑を備え、粗飼料の約9割をまかなう。

 6代目の鈴木健司代表取締役(37)は、北海道立農業大学校(本別町)で酪農を学び、卒業後すぐの2008年4月に実家の鈴木牧場に就農した。従来のつなぎ飼いから翌09年にフリーストール牛舎に転換。13年に父隆志さん(72)から経営を引き継いだ。家族経営から法人化しようと16年にスライブハーツ設立した。現在、両親と社員4人、アルバイト1人の計8人で牧場を運営している。

 「子どもの頃から牛が好きだった」という鈴木さん。長男であったことから、おぼろげながらも家業を継ぐことは意識しており、自然と酪農の道に進んだ。実家に戻った時に80頭ほどだった牛も、牛舎の増設などに1億5000万円を投じた規模拡大を経て現在の280頭まで増やした。

2.科学的管理で乳質向上
 規模拡大と併せて生産性の向上に力を入れ、米国の優良牛を導入した遺伝改良や牛の状態に合わせた配合飼料の管理などに取り組んだ。17年からはAI技術により牛の状態の常時把握や発情、妊娠などの繁殖管理ができるファームノート(帯広市)のウェアラブルデバイス「ファームノートカラー」を導入し、経験に頼らずにできる農場運営を目指している。

 1頭当たりの年平均乳量は01年の8401キロから21年までに1万2224キロへと46%増えた。健康な乳房からの質の良い牛乳の指標である「乳中体細胞数」は15万個前後を常に保ち、出荷基準の30万5000個を大きく下回っている。21年度の総乳量は2850トンで、現在の飼育数を維持した上で年間3000トン以上を目標にしている。搾乳牛は出産を1、2度経た牛が多く、経産3度目から乳量が増加安定することを踏まえて「伸びしろはある」とみている。

3.交流で広がる視野 新事業へのヒントに
 同友会には、視野を広げて将来の事業展開につなげたいと17年に加入。毎月の「経営指針研究会」を通じて自らの経営理念を「命を紡ぎ、想いを紡ぎ、価値ある農業に取り組み豊かな社会の礎となる」とした。

 加工品の製造販売に着手したい考えがあり、同友会メンバーの先達らからも刺激を受け、学んでいる。将来は例えば町内の直売所のソフトクリーム向けにソフトクリームミックスを提供するなど町産品として町を盛り上げたいとの希望を抱く。「自社製造が難しくても、今はアウトソーシングもできる。まずは始めてみたい」と話す。

4.消費拡大のために魅力ある商品を
 スライブハーツという社名には「人と自然が共生する豊頃町で、関わる人すべての心が豊かになれるような酪農を目指したい」との思いが込められている。牛乳の供給過剰などで個人消費の拡大を呼びかける声も聞こえるが、「飲んでくれと求めるのではなく前向きに消費してもらえるよう、魅力ある商品を作りたい」とし、よりいっそうの質の向上に努めたいと言う。「会社とは社会をよくするためにあるもの。これからも必要とされる食料生産を担いたい」と思いを語った。


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