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人の気配「柔らかい生地の先の強さ」

打ち合わせ中の制作チーム。左端が伏見有起さん

 長い間、旅を続けている。もちろんライブツアーという名の音楽旅なので、新しい音楽はもちろんのこと、一緒にTシャツなどのグッズを持っていく。多くのミュージシャンに当てはまることではないが、僕の場合は全てのアイテムの企画や制作、販売に関わっている。ちゃんと心を通わせて、自分も欲しいと思えるモノを作り続けたい。そして、制作チームもお客さんも一緒にそのモノを楽しめたとき、「最高なグッズができた」と胸を張って言えるのではないだろうか。

 約5年前、出会ったその日に一人の女性のファンになった。山梨を拠点にしながら、インドの伝統的なブロックプリントに魅せられ、現地の職人とすてきなアイテムを作っている伏見有起さん。酒の席でおしゃべりを楽しんでいるうちに、モノ作りに対する考え方や、そこから透けてくる人生の捉え方、そして話し方やたたずまいからこぼれ落ちる人柄に引かれた。まさに「人の気配」である。

 その後、今から半年前に連絡を取る機会があり、僕のグッズを作ってもらえることになった。音楽を聴きながら旅をしたくなるような、春にぴったりのダブルガーゼクロス。柔らかい生地に触れるだけで、不安な気持ちが和らぐ。それはガーゼに包まれて眠る子供を見ればよく分かる。人は相性の良い五感を使って心と体を守っているのだ。肌触りにこだわる有起さんの仕事は大切な人を守る強さそのもの。そして、それがインドで作られているという意味。世界はつながっているのだ。心から平和を願う。

 コロナ禍が始まった頃、少しでも不安な夜に寄り添えたらと思い作った『揺れる葉』という曲がある。大病を公表した有起さんの耳に、今度は僕から音楽を。



<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
 ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。昨年のV6への楽曲提供が話題。6月から全国11本のツアーが始まる。

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