アフリカの文化広めたい 十勝拠点にアーティストを支援する服部さん
【中札内】「美しい歌声」「日本語の発音も上手」-。動画投稿サイト「ユーチューブ」で、アフリカの子どもが日本の曲をカバーした動画が話題だ。彼らはアフリカのアーティスト集団のメンバーで、その仕掛け人が昨年、活動拠点を十勝に移した日本人の服部アランさん(35)=中札内。服部さんはオンラインで現地のアーティストをサポートし、「かっこいいアフリカの文化を広めたい」と話している。
アーティスト集団は「Urban Cohesion(アーバン・コヒージョン)」。アフリカ各国の音楽アーティストやデザイナーなど19組約30人で構成し、2019年に設立された。
日本曲をカバー
きっかけは、服部さんが本業の開発コンサルタントの仕事でアフリカ各国に滞在し、数多くのストリートミュージシャンと出会ったこと。彼らの才能に感銘を受ける一方、活動範囲が限られ、十分な収入に結び付いていない現状に、「一工夫すればもっと多くの人にリーチできるのでは」と考え、団体設立と動画配信をスタートさせた。
特に注目されたのが、ヨハネスブルク出身の姉弟ユニット「ビコマナ」による日本のカバー曲の数々。歌い手の姉ビコ(14)とギターの弟マナ(11)の息の合った伸びやかな音楽が特徴だ。初投稿の「ロビンソン」は、本家・スピッツの草野マサムネさんも絶賛し、一躍脚光を浴びた。動画の再生回数は200万回近くまで伸びている。
2人は日本語を話せないが、ローマ字の歌詞を発音して練習。服部さんがアドバイスし、半年以上かけて動画を作り上げた。服部さんは「アーティストなので音を捉えるのがうまい」と話す。ビコマナは日本でのメディア出演など活躍の場が広がりつつあり、今後は団体のメンバーとCDアルバムも作る予定だ。
コロナ禍で十勝に
服部さんは海外中心の生活だったが、コロナ禍で渡航ができず、昨年6月に帯広出身の妻の出産に合わせて十勝に拠点を移した。中札内農村休暇村フェーリエンドルフのコテージを賃借して家族と住む。本業は育児休暇中。アーティスト支援は更別村の地域創造複合施設「サラパーク」のスタジオを使い、オンラインで現地とやりとりしている。
アーティスト自身が取引先との連絡やスケジュール管理を意識するようになり、「彼らの学びの機会にもなっている。自分たちで考え、自立する力を付ける機会を提供したい」と服部さん。「動画を通じてその活動や日常の姿を見てもらうことで、アフリカのイメージを『かわいそう』から『かっこいい』に変えたい」と話す。(高津祐也通信員)