夜の街「時短」昼に活路 休業との狭間苦慮 コロナ緊急事態
16日に発令された道内の緊急事態宣言から1週間余り。新型コロナウイルスの感染が拡大傾向の十勝でも、飲食店への時短営業が呼び掛けられ、帯広市内中心部の繁華街は午後8時以降、暗闇に包まれている。そんな中、新たに昼営業を始めた飲食店もある。「客や取引業者との関係継続」や「新たな挑戦の機会に」など経営者の思いはさまざま。休業か短縮営業か-。宣言期間中に揺れる店主らの思いを追った。
カクテルバー「パル」(西1南10、立花ビル地下1階)では、創業19年で初のランチ営業を始めた。夜間の営業で提供していたパスタ料理を5種類ほどに増やしたほか、カレーなども日替わりでメニューに。昨年の緊急事態宣言時は37日間の休業を経験した。日本バーテンダー協会にも加盟する同店。「ランチ営業でコーヒーを入れているのはバーとしては不本意。(ランチ営業しているのは)まちの明かりを消したくないという思いだけでしょうか」とウイスキーのボトルを背に店主の椿芳則さんは静かに話す。
仕入れ業者のため
日頃は多くの酔客が集う「田五作」(西1南10)でも開店時刻を2時間繰り上げ、午後3時から営業。19日には宣言下の店を案じて約15人の客が訪れたが、日によって人の波はばらつきがある。経営する萩史之さん(名門通り共栄会会長)は「お客さんが来なくてもいいという思いでやっている。店を閉めると酒屋さんたちなど仕入れ業者さんたちに迷惑を掛けてしまう」と話す。
昼営業を以前から続けてきた店も営業スタイルを変更し工夫する。「コモドキッチン」(西1南9)では昨秋から午後3時からの昼営業をスタート。宣言前までは夜に出していたおつまみや酒など通常メニューを出していた。16日から午前11時開店とし、定食などランチメニューも新たに用意した。
同店のほか、市内中心部でバーや居酒屋などを運営する「SKI Lig」(帯広)ではテークアウトやランチ需要を見込み、各店の営業スタイルの変更を模索中だ。同店でも人気のあったカツサンドをテークアウト限定で販売するブランド「サンドリッチ」を立ち上げた。久保山泰有店長は「従業員も抱える中で、休むのではなく少しでも工夫して営業したい。ランチ目当ての新規客もおり、手応えはある」と語る。
「要請の差、なぜ」
ただ、営業する店では「昼飲み」を堂々とうたえない実情も。ある店主は「感染対策は万全を期してやっているが、コロナは夜出て昼出ないわけじゃない。正直、休業要請が出た方が気持ちはスッキリする」と複雑な心境をのぞかせる。
市内中心部の飲食関係者からは、行政の補償を手薄と批判する声も根強い。複数の飲食店経営者は「十勝の感染者数が連日多数発表されている中、旭川などのようになぜ休業要請が出ないのか。十勝は時短要請の地域になっており、協力金の額も(休業要請の地域よりも)少なく、時短要請といいながら実質の休業要請に等しい」と困惑を隠さない。
市内中心部では、大半の店が時短営業より休業を選んでいるのが実情。ビルごと休館するケースもある。まちの明かりが戻ってくるのはいつか。飲食店の苦境は続く。(本田龍之介)