編集余録「温かい気持ち」
日本人の助け合いの精神やマナーの素晴らしさは、時折海外から称賛される。サッカー観戦後の自主的なごみ拾いや、被災地や避難所での規律ある行動などがそれだ
▼同じ日本人として喜ばしい半面、あまり身近なことに感じていなかった。だが今回の台風10号で、自宅地域が避難勧告を受け、わずかな時間「避難所」を経験。その中で心温まる光景に出合った
▼明け方、帯広東小学校に避難すると、すでに多くの住民が2階と3階に分かれ、教室で休んでいた。眠れぬ夜だったせいか、疲れ切って床に座り込む姿も。そんな中、避難所に届いた毛布や敷物を担ぎ、運ぶ大人たちに混ざって一生懸命運んでいる帯広翔陽中の生徒たちがいた
▼最初は自分の身内のために持ってきたのかもしれない。でも、誰から声をかけるでもなく数人が集まり、1階にいって毛布や敷物、湯を入れたアルファ米を受け取り、2階や3階に運んだ。「毛布はいりませんか?」「熱いですから気をつけてください」。こんな声掛けも聞いた
▼非日常の場所で、知らない人たちと同じ空間にいると、ストレスがかかるもの。中学生の優しい振る舞いは、校舎の床の堅さや冷たさをしばしの間、忘れさせるのに十分だった。避難翌日から期末テストだった彼ら。情けは人の為ならず。きっとお天道様は見ていてくれたと信じたい。(植木康則)