芸術家の卵、酪農ヘルパーに 南十勝で事業計画
芸術家志望の若者を酪農ヘルパーとして雇用し、芸術活動を支援しながら酪農家の労働力不足を解消する新事業が南十勝で計画されている。若手芸術家のキャリア支援などを行っている「AGホールディングズ」(東京、柴山哲治社長)のアイデアで、2012年度末に閉校した大樹町の旧尾田小校舎を創作活動の拠点として活用する予定。当初は3月に卒業する大学生ら数人程度の受け入れから始め、将来は十勝をモデルケースに全国規模の事業展開も目指す。
柴山社長(59)によると、全国で芸術分野を専攻して卒業する大学生は年間約2万人に上る。卒業後も芸術家を志す若者の多くはアルバイトなどで生計を立てながら創作を続けるが、こうした環境下では作品の制作・保管場所や活動時間などが制約され、結果的に芸術家の道を断念するケースも少なくないという。
一方、酪農業は毎日の搾乳作業をはじめ拘束性の高さなどから、労働力が十分に確保されていないのが現状。同社はこうした状況に着目し、芸術家の卵を酪農ヘルパーとして迎え、安定的な生活の糧とともに伸び伸びとした創作活動の拠点を提供する。若者は朝夕の搾乳以外の時間と創作拠点を自由に使うことができ、酪農家にも日々の労働力を確保できるメリットがある。
同社はヘルパーを務めた若者の作品を地元の公立美術館などで展示する他、作品の販売・オークションなども企画して芸術家としてのキャリアを支援する計画。大樹町や南十勝酪農ヘルパー有限責任事業組合との調整を進めており、近く学生の募集に乗り出す。
柴山社長は十勝が全国有数の酪農地帯で恵まれた自然があることや、美術館などの施設が多く存在することを挙げ、「十勝は風光明媚(めいび)な素晴らしい土地。芸術家志望の若者の夢をかなえ、酪農業の発展にもつなげたい。十勝に多くの芸術家の卵が集うことで、アーティスト村、レジデンス(居留)村のような場所もできれば」と期待を寄せている。
(津田恭平)