地域課題に危機感 自民との関係構築がカギ
帯広市長選が戦後初の無投票となったのは、政党間の対立よりも、イデオロギーでは解決できない地域課題への危機意識が上回った結果と言える。「市民党」という錦の御旗に、自民党の一部支持者が流出したのも要因だ。しかし、自民政権下で、市政を運営していくには、政権与党との関係構築という課題が横たわる。
十勝・帯広での近年の国政選挙では、環太平洋連携協定(TPP)でみられるように、政党間の主張の差より、都市と地方の認識差による諸問題の方が有権者のより高い関心事になっていることがうかがえる。
こうした背景の中、政党色を排し、看板政策「フードバレーとかち」で町村長から「十勝開拓130年の歴史で初」と賞されるオール十勝体制を敷いた米沢氏。十勝全体を味方につけたことで、政党・団体が同氏に弓を引きにくくなった。
無投票は、米沢氏1期目の評価を得票の形で採点を受ける機会を失った。十勝毎日新聞社の世論調査での市政不支持率は6・7%と低いが、最多は「どちらとも言えない」の50・8%。より具体的な成果を求められる2期目の運営次第では、不支持率が増える可能性もはらんでおり、米沢氏にはより市民の声を吸い上げる努力と緊張感が求められる。
当選後駆けつけた自民の中川郁子衆院議員は、米沢市政との間の溝の原因を「コミュニケーション不足」としたが、意思は互いに理解して初めて疎通する。地域課題を「未来への扉」と称し、開けるのは地域全体の力だとした米沢氏には、「十勝、帯広のため」という共通の座標軸の上で、中川・自民といかに共同歩調をとれるかが試される。
(高田敦史)