内田氏文化庁に転出 アイヌ文化研究の百年記念館副館長
十勝で22年間、学芸員としてアイヌ民族文化の研究と情報発信に努めてきた内田祐一さん(54)=3月末で帯広百年記念館副館長を退職=が、4月1日付で文化庁伝統文化課アイヌ文化振興調査官に就任した。国が2020年までに胆振管内白老町にオープン予定の「民族共生の象徴となる空間」の博物館開設準備などを担う。内田さんは「十勝でやらなければいけないことは多い。いずれ戻ってきたい」と話している。
内田さんは室蘭市生まれ。室蘭清水丘高校時代に萱野茂氏(二風谷アイヌ資料館元館長、元参院議員、故人)の著作を読み、「この土地で生まれ育った先住民族文化の面白さを何で知らなかったのか」と衝撃を受けて勉強を開始、東海大(神奈川県)で学芸員資格を得た。卒業後、新生広告社(現・新生)帯広支社に3年間勤務、アイヌ民族博物館(白老町)で学芸員を務め、1992年に帯広百年記念館学芸員になった。
十勝では調査・研究と同時に市民へのアイヌ民族文化の発信に力を入れた。自然が専門の池田亨嘉学芸員とともに「アイヌ語で自然観察」を94年から開き、「樺太アイヌ民族誌」(2004年)などの展示会開催を進めた。アイヌ民族文化情報センター「リウカ」を百年記念館内に06年にオープン、同センターの利用者は年間1万人を超える。
「民族共生の象徴となる空間」構想では、専門家の1人として内田さんも検討に加わり、その開設準備を担う人材として白羽の矢が立った。内田さんは「全国的な視野で、国の仕事をお手伝いできれば」と語る。
十勝では「帯広カムイトウウポポ保存会(酒井奈々子会長)が若い世代への文化伝承で理想的な活動を進めている」と内田さんは高く評価する。「(百年記念館での自分の仕事は)若手職員に引き継いだが、いずれ時期が来れば、十勝に戻ってまた活動ができたら」と話している。(横田光俊)