令和2年に注意を要する病害虫
道総研 中央農業試験場 研究部 予察診断グループ
1.成果の概要
北海道病害虫防除所、道総研各農業試験場および道農政部技術普及課等で実施した病害虫発生予察事業ならびに試験研究で得られた結果から、令和2年に特に注意すべき病害虫について報告します。
2.令和元年の病害虫の発生状況
令和元年は、4、5月が全道的に高温少雨に経過したた 表1 2019年に多発・やや多発した主要病害虫め、水稲のアカヒゲホソミドリカスミカメの第1回成虫とたまねぎのネギアザミウマは早発し、その後の早夏~夏季が高温傾向となったことから産卵活動が活発となり多発しました。また、秋まき小麦の赤さび病は、5~6月の高温多照により多発しました。リンゴの黒星病は、8月の多雨により発生量が増加し、一般園においても被害が認められました。
道内の主要病害虫の内、令和元年に多発となったものを表1にまとめました。
3.令和2年に特に注意を要する病害虫
(1)秋まき小麦の赤さび病
高温多照の気象条件で多発しやすい病害です。秋まき小麦の「きたほなみ」は、本病に対する抵抗性が“やや強”ですが、近年は各地で発生が目立っているため抵抗性“弱”品種に準じた防除が必要な状況です。上位葉に発病が認められてからの防除では十分な効果が得られないため、発病が懸念されるほ場では、止葉抽出から穂ばらみ期に1回、開花始に1回の薬剤散布が必要です。
(2)秋まき小麦の土壌病害
今年度は、縞萎縮病や立枯病が目立ちました。また近年、十勝以外の各地域で問題となっているなまぐさ黒穂病は、病原菌が土壌伝染することが明らかとなりました。これらはいずれも土壌病害のため、連作や短期輪作を避けることが重要な対策となります。
(3)野菜類のネギアザミウマ
高温少雨で多発し、たまねぎやねぎなどの表皮を加害して白くかすり状の斑点を多数生じさせる他、近年はキャベツの結球内部を加害することによる品質低下の事例も報告されています。防除の要点は、1回目の殺虫剤散布適期を逸しないこと、効果の高い薬剤を使用すること、散布間隔を長くせず適切な日数とすることです。
(4)りんごの黒星病
黒星病は、葉だけでなく果実にも病斑を形成することで著しい収量減の要因となる病害です。
(5)りんごの腐らん病
腐らん病は、主幹や主枝、枝梢部に胴枯れ症状、枝枯れ症状を引き起こす病害です。
4.令和元年に新たに発生を認めた病害虫
令和元年に道内で新たに発生を認めた病害虫数は、17(病害7、害虫10)でした。その一部を抜粋して紹介します。
(1)小麦のミドリハダニ(新寄主)
秋まき小麦が寄生されると、下葉にMicrodochium nivale による葉枯症状と酷似した白色~褐色の斑紋を生じます。発生場所は、ほ場周縁部に集中します。
(2)ばれいしょの黒あし病(病原の追加)
茎基部の黒変腐敗や茎葉の萎凋など、黒あし病に類似した症状を呈するばれいしょ株から、国内で本病の病原菌として知られている既知の4種とは異なる性状を示す菌が分離され、同定した結果、Dickeya. chrysanthem(i Burkholder)Samson であることがわかりました。
病徴から、菌種を区別することはできません。
【補足】「特に注意を要する病害虫」および「新発生病害虫」の詳細な情報については、北海道病害虫防除所のホームページに掲載していますので、そちらもご覧ください。
(成績名:令和元年度の発生にかんがみ注意する病害虫)
本技術内容についての問い合わせ先
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431
E-mail:tokachi-agri@hro. or. jp