寒さに強く、おいしい豆腐ができる大豆「十育258号」
道総研 十勝農業試験場 研究部 豆類グループ
道総研 中央農業試験場 作物開発部 作物グループ、生物工学グループ
同 加工利用部 農産品質グループ
道総研 北見農業試験場 研究部 地域技術グループ
1.背景
北海道の大豆栽培面積のうち約7割は産地品種銘柄『とよまさり』に含まれる品種が作付けされている。同銘柄の構成品種である「ユキホマレ」は、開花期耐冷性、低温裂開抵抗性が不十分である。また、加工面では豆腐が固まりにくい欠点がある。同じく『とよまさり』銘柄の「とよみづき」は、開花期耐冷性、低温裂開抵抗性が「ユキホマレ」より強く、豆腐も固まりやすい。しかし耐倒伏性が「ユキホマレ」より劣り栽培しにくい。また、一部豆腐メーカーからは、食味が「ユキホマレ」より物足りないとの指摘を受けている。そのため、豆腐の食味と固まりやすさの両方に優れ、より栽培しやすく耐冷性に優れる『とよまさり』銘柄品種が求められている。
2.育成経過
「十育258号」は、多収・高糖の「十育250号」を母、耐冷性に優れ、豆腐が固まりやすい「十育249号」(後の「とよみづき」)を父として人工交配を行い、選抜、固定を図った系統である。
3.特性の概要
1 )成熟期、子実重は「とよみづき」「ユキホマレ」並である。耐倒伏性は「とよみづき」より優れる。十勝管内現地試験地での子実重は、鹿追町・清水町では両品種並、音更町では両品種より多収、幕別町では「とよみづき」より多収で「ユキホマレ」並である(表1、2)。
2)開花期耐冷性、低温裂開抵抗性は「とよみづき」並に強く、「ユキホマレ」より優れる(表3)。
3 )蛋白含有率は「とよみづき」より低く「ユキホマレ」並、ショ糖含有率は「とよみづき」より高く、「ユキホマレ」並である(表1、図1)。
4 )豆腐メーカーによる製品試作試験での総合評価は「とよみづき」「ユキホマレ」より優れる。「とよみづき」との比較では甘み、「ユキホマレ」との比較では硬さの評価が高い(表4)。
5)裂皮の発生は「とよみづき」並で、「ユキホマレ」よりやや多い(表1)。
4.普及態度
「十育258号」を北海道の「とよみづき」の全て、冷害リスクの高い地域を中心とした「ユキホマレ」の一部
に置き換えて普及することにより、『とよまさり』銘柄大豆の豆腐需要の拡大と良質安定生産に寄与できる。
1)普及対象地域:
北海道の大豆栽培地帯区分Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの地域およびこれに準ずる地帯。十勝の大豆栽培地帯は全て普及対象地域に含まれる。
2)普及見込み面積:5,000ha
3)栽培上の注意事項:
ダイズシストセンチュウ・レース3抵抗性であるが、連作および短期輪作を避けるとともに、レース3抵抗性品種にシストが着生する圃場では作付けを避ける。
【用語解説】
とよまさり: 流通上の銘柄名。「ユキホマレ」「とよみづき」「トヨムスメ」「トヨハルカ」「トヨホマレ」「トヨコマチ」「ユキホマレR」の7品種が含まれる。
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道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp