目指せ!抵抗性品種作付100%
北見農試 研究部 作物育種グループ
ジャガイモシストセンチュウに強い でん粉原料用ばれいしょ「コナヒメ」
1.背 景
でん粉原料用馬鈴しょは、北海道における馬鈴しょ全体の作付面積の約3割を占める重要な用途である。現在、でん粉原料用品種のうち、主力である「コナフブキ」が8割を占めているが、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たないという大きな欠点があり、抵抗性品種の普及促進は安定生産上の最も大きな課題である。
このような状況の中、平成24年に北海道農政部において「北海道産馬鈴しょの安定供給に関する検討会」が設置され、でん粉原料用については平成34年度にジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の普及率を100%にすることが目標とされた。しかしながら、近年育成されたでん粉原料用のジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種は、多収ではあるものの枯ちょう期が遅い特性が普及の制限要因となるため、「コナフブキ」並の枯ちょう期の品種に対する要望は高い。
2.育成経過
「コナヒメ」は、平成15年にホクレン農業総合研究所恵庭研究農場において、「DP01」を母、「コナフブキ」を父として人工交配を行い選抜され、平成25年より「HP07」の系統名で各試験に供試された。平成26年7月に、品種登録出願公表された。
3.特性の概要
1)枯ちょう期は、「コナフブキ」と同等の“中晩生”である。
2)「コナフブキ」より上いも数が多く、上いもの平均重がやや軽い。「コナフブキ」より上いも重がやや重く、でん粉価がやや低いが、でん粉重は「コナフブキ」並である。
3)ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ。ただし、ごくわずかなシストの形成が認められることがある。
4.普及態度
「コナヒメ」は、「コナフブキ」と同様に秋まき小麦の前作としての導入や、ジャガイモシストセンチュウ未発生地域への普及も期待できる。このことから「コナヒメ」を「コナフブキ」に置き換えることにより、北海道産でん粉の安定生産が可能になる。普及見込み面積は7,000ha で、北海道優良品種に認定された「コナユタカ」(平成26年)、「パールスターチ」(平成27年)とともに、ジャガイモシストセンチュウ感受性品種からの全面置き換えを目指す。なお、栽培上の注意事項は以下の通り。
1)褐色心腐の発生程度が「コナフブキ」より高い“少”であるので、適切な肥培管理や十分な培土を行う。
2)疫病抵抗性であるが、抵抗性を侵す新レース出現の恐れがあるため、「コナフブキ」に準じた防除を行う。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
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