これでバッチリ!超強力小麦「ゆめちから」の栽培法
中央農試 農業環境部 栽培環境グループ・作物開発部 農産品質グループ
農業研究本部 企画調整部 地域技術グループ
上川農試 研究部 生産環境グループ・地域技術グループ
十勝農試 研究部 生産環境グループ・地域技術グループ
1.背景と目的
超強力小麦品種「ゆめちから」の栽培法は「キタノカオリ」に準ずるとされるが、栽培現場では収量・子実タンパク質含有率(タンパク)の変動が大きく、「ゆめちから」の特性に応じた栽培法の早急な確立が求められている。そこで、「ゆめちから」の高品質安定生産を図るため、加工適性に合致した播種期、播種量、窒素施肥、成熟期予測法等の栽培体系を確立する。
2.試験方法
2012~2014年(収穫年)に、中央・上川・十勝農試、石狩3市、十勝1町において、播種期・播種量・窒素施肥法試験を実施し、生育・収量・品質に及ぼす影響を調査した。
3.成果の概要
1 )越冬に必要な主茎葉数は、道央・道北で6葉、道東で5葉と設定した。該当する越冬前積算気温はそれぞれ590℃、480℃で、これらを確保できる時期を播種適期とした(図1)。
2 )目標収量600kg/10aの達成に向け、目標穂数を道央・道北580本/㎡、道東530本/㎡とすると、目標越冬前茎数はそれぞれ1500本/㎡、1000本/㎡であった。発芽率を90%と仮定した場合の播種適期における適正播種量を求めたところ、いずれの地域も180~200粒/㎡であった(図2)
3 )いずれの地域も起生期-幼形期の窒素施肥により、収量、タンパク、穂数、窒素吸収量が増加し、止葉期-開花期の窒素施肥により、タンパク、窒素吸収量が増加した(図3)。稈長は年次・圃場間差が大きいことから、栽培目標値から除いた。各地域の標準窒素施肥体系(起生期-幼形期-止葉期)を、道央9-0-6、道北6-6-6、道東8-0-6(kg/10a)と設定した。
4 )生産実績を活用した窒素施肥設計法は「ゆめちから」においても適用可能であった。施肥設計に必要な計算式・パラメータを求め、窒素施肥シミュレートツールNDASに「ゆめちから」の施肥設計機能を追加した。
5 )止葉期葉色が道央・道北で45未満、道東で49未満の場合はタンパク13%を下回る可能性が高く、止葉期以降の窒素施肥量を6kg/10aから増肥する必要があった。また、道東において葉色が53以上の場合は、タンパクが15.5%を超える可能性が高く、止葉期以降の減肥が必要であった。増減肥の目安は止葉期以降の窒素施肥量3kg/10aにつきタンパクがおよそ1ポイント変動するとして行うのが適当と考えられた。
6 )「ゆめちから」の穂水分は、成熟期前後とも「きたほなみ」より低下程度がやや小さかった。出穂期及び成熟期は有効気温(日平均気温-基準温度、ただし正の値)の積算値を用いて予測できた。
7)以上をまとめ、「ゆめちから」の栽培目標および栽培体系を示した(表1)。
4.成果の活用面と留意点
「ゆめちから」に対応した窒素施肥シミュレートツールNDAS(MS-Excel ファイル)を道総研HP(農業技術情報広場)で公開予定である。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 生産環境グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp