8、9月どり長ねぎの品種特性
道南農試 研究部 地域技術グループ
花・野菜セ 研究部 花き野菜グループ
1.背景と目的
既存の道産露地ねぎは9、10月どりが主であるが、この一部を1か月程度前進させて早期出荷体制を確立することにより、露地ねぎの大ロット出荷期間が延長し、道産シェア拡大につながると考えられる。しかし近年育成されたねぎ品種の8、9月どりへの適応性については十分把握されておらず品種選択時の指針がない。
そこで、ねぎ各品種の露地8月どりおよび露地9月どりにおける生育、収量等を明らかにし、品種特性をとりまとめる。
2.試験方法
1)8月どり露地ねぎの品種特性
(1)対象時期:露地4月下旬定植(初期べたがけ)、8月下旬収穫
(2)試験場所:道南農試場内圃(北斗市)、道南地域現地圃1ヵ所(北斗市)
(3)調査項目:収量、品質、収穫期幅等、標準品種「北の匠」
(4)その他調査:
(a) 卸売市場商品性総合評価:北斗現地試験産ねぎをJAの通常輸送方法で送り、関東A卸売市場の青果卸担当者が外観の商品性を評価した。
(b) 焼きねぎ食味評価:道南農試産ねぎを食品加工会社に送り、通常調理の焼きねぎをブランド品種認定協議会15名が食味を評価した。
2)9月どり露地ねぎの品種特性
(1)対象時期:露地5月上中旬定植、9月下旬収穫
(2)試験場所:花・野菜セ場内圃(滝川市)、せたな町、厚沢部町、上ノ国町
(3)調査項目:同上
3.成果の概要
1 )8、9月どり露地ねぎ生産の実態を調査し、品種の優劣を判断する項目は、重要な順に、葉鞘の太りが早くL規格以上収量が多いこと、えり締まりが硬く外観品質が良いこと、収穫期以後のえり締まりが硬いままで収穫期幅が広いこと、葉身筒内液体(以下「粘液」)量が少ないこと、の4点とした。なお粘液は多糖類と糖類が含まれるゼリー状の粘質物で、ねぎ葉身調製後の流出が流通上商品性の低下をもたらすことが問題であった。
2 )道南農試8月どり11品種のうち、L規格以上収量が多いのは「夏山一本太」、「夏扇パワー」、「冬山一本太」であった(表1)。えり締まりが特に硬いのは「夏山一本太」、「TSX-511」であった。収穫期以後の調査のえり締まりが特に硬いのは「夏山一本太」、「冬山一本太」であった。粘液量は標準品種が最も少なかったが、比較的少ないのは「TSX-511」であった。
3 )花野技セ9月どり14品種のうち、L規格以上収量が多いのは「夏山一本太」、「夏扇4号」、「夏扇パワー」であった(表2)。えり締まりが硬いのは「森の奏で」、「夏山一本太」、「白矢」、「夏扇4号」であった。収穫期以後の調査のえり締まりが特に硬いのは「夏山一本太」、「冬山一本太」であった。粘液量は標準品種が最も少なかったが、比較的少ないのは「吉宗」、「夏山一本太」、「TSX-511」、「ホワイトソード」、「源翠」、「UE-106」であった。
4 )現地試験では、8月どりは「夏山一本太」(北斗現地)、9月どりは「森の奏で」(せたな町)、「夏扇パワー」(厚沢部町)、「冬山一本太」(上ノ国町)の評価が高かった(データ略)。
5 )L規格以上収量が多い各時期3品種のうち、「夏扇パワー」は収量は多いが粘液量が明らかに多かった。「夏山一本太」は収量が多く、粘液量は標準品種並みからやや多い程度であった(図1)。8月どり3品種について、道南農試産の外観、内部品質、粘液量、焼きねぎ食味評価と北斗現地産のエアー剥き難易、関東A卸売市場商品性総合評価の項目で比較すると、「夏山一本太」の評価が高かった(図2)。
6 )以上より、露地ねぎ8月どり11品種と9月どり14品種の特性をまとめた。標準品種「北の匠」と比較して粘液量がやや多いもののその他判断項目3点(L規格以上収量、えり締まり、収穫期幅)が優る品種を明らかにした。8月どりで最も優ったのは「夏山一本太」、次いで「夏扇パワー」、「冬山一本太」であった。9月どりで最も優ったのは「夏山一本太」、次いで「夏扇4号」、「夏扇パワー」であった。
用語解説
「L規格以上」:白い部分の太さが直径1.8~2.4cm のとき、L 規格に分類される。
「えり締まり」:緑の葉の付け根部分の引き締まり程度のこと。硬いと葉がばらけないため、外観品質が優る。
「収穫期幅」: ねぎは収穫予定日を過ぎても生育して肥大するが、えり締まりが緩んだり、葉色が淡くなったりして外観品質が劣化する。商品性を保てる期間を収穫期幅と定義した。
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道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
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