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そこに物語あり(35)中札内・西札内桜公園

西札内桜公園に建立されているモザルック像と三上清志さん

地域発展に尽力した勇壮な開拓者
 日高山脈や十勝の大平原を一望できる中札内村西札内地区の小高い山にある観光スポット「一本山展望タワー」(高さ28メートル)の麓に、西札内防災ダム湖が広がる。ダム堤下流にはきれいに整備された西札内桜公園があり、そこに勇壮なアイヌのブロンズ像と幕末の探検家松浦武四郎の歌碑が並んで建っている。

 アイヌ像は、十勝アイヌの中で勢力を誇っていたサツナイ族の祖とされる「モザルック」。サツナイは札内川上流で、同左岸、ヌプカクシュナイ川の合流地点の一帯とされ、現在の西札内地区を指す。同地には「ヌプカクシュナイコタン」が形成され、モザルックは族の長も務めた。

戦いに敗れ「コタン」は消滅
 モザルックがコタンを開いて200年ほど後の1669年に「シャクシャインの戦い」が起き、ヌプカクシュナイの若者も参戦。しかし、戦いに敗れ、若者の戻らぬ同コタンは厳しい環境に置かれ、やがて人々は別の地に移り住み、同コタンは消滅した。

 歌碑は、松浦が1857年7月(旧暦)にサツナイコタンのマウカアイノ宅に1泊し、シカ肉の夕食を振る舞われたことに感激して詠んだ歌が刻まれている。

 1997年の同村開村50周年に合わせ、地域の人たちが「西札内地区の先住民族を語る百人委員会」を組織し、像と歌碑を建立した。代表を務めた三上清志さん(68)は「子供の頃、畑の住居跡からヤジリや土器を見つけた。地域の発展があるのは開拓者を支えたアイヌのおかげ」と建立の意義を語る。

 像は、旭川市出身の日展評議員・審査員で、「現代の名工」の彫刻家善本秀作さんの作品。美術的にも価値がある。

 ダムの東岸辺付近の湖底には「忍」の一文字が刻まれた一抱えほどの大きな石が眠っている。一帯が湖底に沈む前の92年9月3日、地域の人たちが設置した。湖底から地域を見守り続けてくれているはずだ。

後世に引き継ぐまつり再開模索
 桜公園では毎年9月に「火祭り」が開催されていた。ファイアストームやタワー、ダムのライトアップなどを通して地域の人たちが交流した。99年には帯広カムイトウウポポ保存会の尾関昇副会長(故人)が祭司を務めて神事も行われたが、2005年を最後に途切れた。三上さんは「今こうしてこの地で暮らしていられるのは地域の歴史があったればこそ。後世に引き継いでいかなければならない」と再開を模索する。(大野篤志)

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