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札医大の研究室から(6) 堀尾教授に聞く 2017/3/3

 筋力が徐々に低下し、歩行や呼吸が困難になるケースのある(遺伝性)筋ジストロフィーの根本的な治療法は、現在もまだ見つかっていない。だがその症状の進行を遅らせる可能性を持つ長寿遺伝子(サーチュイン)の研究が行われている。
 新たな治療法として注目される研究に取り組む医学部薬理学講座教授で、医学部長を務める堀尾嘉幸教授に話を聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

堀尾嘉幸(ほりお・よしゆき)

 1955年大阪府生まれ。81年弘前大学医学部卒業。85年大阪大学大学院医学研究科修了、同医学部薬理学第2講座助手、88年スタンフォード大学客員教授、94年同医学部薬理学第2講座講師、97年同医学部薬理学第2講座助(准)教授、99年札幌医科大学医学部薬理学講座教授、2014年から同医学部長。

浅利 筋ジストロフィーとはどんな病気か。

堀尾 筋肉が破壊・変性と再生を繰り返す遺伝性の疾患で、変異する遺伝子の種類により生命に関わる重篤なものから特に自覚症状がないものまで、さまざまなタイプが存在する。
 中でも「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」は、次第に筋萎縮と筋力低下が進行する疾患で、根本的治療法がない難病だ。寿命が普通の人よりも短く、著しく日常生活が制限される。命に関わる問題として呼吸不全やそれに伴う感染症、さらに心筋の障害による心不全がある。

浅利 新たな治療法とされるのはどんなものか。

堀尾 これまで、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)が唯一の薬物で、病状の進行を2年程度遅らせることができる、といわれていた。最近になり、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを持つ動物モデルに対して、長寿遺伝子が作るタンパク質「レスベラトロール」が骨格筋と心筋に治療効果を持つことを見いだした。

浅利 レスベラトロールが持つ効用や研究はどんなものか。

堀尾 ブドウやピーナッツの皮などに含まれるポリフェノールの1つであるレスベラトロールは、体内の脂肪を燃焼させ、体の糖(グルコース)の利用を促進するほか、免疫反応を抑制したり壊れたDNAを修復したりする働きが知られている。動物を使った研究でも、一部このようなことが証明されている。
 私たちもレスベラトロールの働きに注目し、心臓の働きが自然に悪くなるようなハムスターにレスベラトロールを投与すると、心筋酸化ストレスが下がり心肥大や心筋線維化が抑制され、さらに寿命も有意に伸びることを見つけた。この研究が、今回の筋ジストロフィーの研究につながっている。レスベラトロールは筋ジストロフィーの筋肉の力を増したり、心臓が悪くなることを抑制したりした。

浅利 長寿遺伝子とはどんなものか。

堀尾 もともと酵母で見つかった遺伝子で、酵母にその遺伝子を多く持たせると寿命が延び、逆にその遺伝子を取り除いてしまうと寿命が短くなる遺伝子のこと。この遺伝子は体の中でタンパク質に変えられ、このタンパク質は細胞の中で他のたくさんのタンパク質の機能を変えるような働きをしている。
 ただし、この長寿遺伝子が私たちの体でも長寿をもたらすかどうかは、よく分かっていない。だが、その活性化により体の酸化ストレスが下がったり、筋肉の力が増したり、心臓の不具合が抑えられたりする働きは分かっている。

浅利 十勝の人たちに向けて。

堀尾 札幌医科大学は北海道の地域医療を支え、地域を担う医師を養成して送り出す機関だが、同時に明日の医学をもっと良いものにする研究を活発に行う大学でもある。筋ジストロフィーの新たな治療法をはじめ、皆さんに貢献できるよう努力を続けていくので、今後もご支援を頂ければ大変うれしく思う。

包括連携協定について

 札幌医科大学(札幌市、島本和明学長)と十勝毎日新聞社(帯広市、林浩史社長)は2014年5月7日、産学連携による保健・医療・福祉の向上など、地域社会や相互の発展を目的とした包括連携協定を締結した。

 同日、札医大で行われた調印式には島本学長、林社長の他、増山壽一北海道経済産業局長も来賓として出席した。
 札医大と勝毎は、連携協定に基づき、健康や疾病予防をテーマにしたセミナーを十勝で開催するほか、新聞社の紙面やWEBサイト(電子版)で情報を発信する。帯広市は食と農林漁業を柱とした地域産業政策「フードバレーとかち」を掲げており、札医大の研究成果を生かしつつ、十勝の食の優位性を発信し、札医大の学生が十勝住民と交流する機会も設ける方針だ。
 具体的には、札医大講師陣が十勝で市民健康講座を開催するほか、十勝の農産物の健康機能性などに関する共同研究に取り組み、その成果を新聞紙面や電子版で発信し、十勝地域を中心とした住民の健康増進につなげていく考えだ。

※2014年5月時点の記事です。島本氏は2016年3月末で学長を退任されました。

札幌医科大学について

 札幌医科大学は1950年に開学し、60年を超える歴史を有する医科系総合大学。2007年に北海道立札幌医科大学から独立行政法人「北海道公立大学法人札幌医科大学」へ移行。5万7861平方メートルの敷地内には、大学校舎(延べ床面積5万8521平方メートル)、研究所(同1617平方メートル)ほか、附属病院(同6万5367平方メートル)などが配置されている。
 医学部、保健医療学部の2学部4学科で構成され、大学院(医学研究科、保健医療学研究科、=院生302人=)、助産学専攻科(学生20人)を合わせると学生・院生数は1347人(2014年4月1日現在)を数える。
 医師、看護師、理学療法士、作業療法士の国家試験では、高い合格率を誇る。過去10年間の医師国家試験の平均合格率は約95%で、全国平均の約90%を上回る。看護師については、過去11年間の国家試験合格率が100%となっている。

包括連携調印式 2014/5/7

島本学長インタビュー 2014/9/10

島本和明(しまもと・かずあき)

1946年10月7日 小樽市生まれ。71年札幌医科大学卒業。72年札幌医科大学第二内科入局。73~75年東京大学医学部第三内科へ国内留学。78~80年米国のサウスカロライナ医科大学へ留学。80年10月札幌医科大学第二内科講師、84年同科助教授、96年同科教授、2004~08年札幌医科大学附属病院病院長を経て、10年4月から16年3月末まで札幌医科大学学長。16年4月から日本医療大学の総長。

※2014年9月の学長在任時のインタビューです。

公開講座 ロコモを学ぶ 2014/10/22

“ロコモ”を防いでいきいきシルバーライフ ~骨と関節の健康を考える~

 札幌医科大学主催の道民公開講座が10月22日、音更町文化センターで開かれた。講師には、札医大整形外科学講座の射場浩介准教授を招いた。射場准教授は「ロコモティブ・シンドローム(略称ロコモ)」をテーマとし、1.ロコモの定義 2.骨粗しょう症と骨折 3.予防と治療の重要性 ― の3つの観点からロコモティブ・シンドロームについてわかりやすく説いた。
 同講座は、札医大と十勝毎日新聞社が5月に締結した包括連携協定に基づき行われた事業の第1段で十勝毎日新聞社が共催している。札医大と十勝毎日新聞社は今後も医療や健康、食などに関する情報発信などの事業を計画している。

< 講演要旨 >

1.ロコモの定義
運動器(体を動かすことに関わるすべての器官を指す)の障害のために要介護になったり、介護が必要になる危険性が高い状態と説明した。

2.骨粗しょう症と骨折
ロコモの原因となる運動器の障害の中で、骨粗しょう症が引き金になるケースが多いことを紹介。それを踏まえ、骨粗しょう症による骨折は単に骨折にとどまらず、生活の質の低下や生命にも関わるものであり、決して軽視してはならないとした。

3.予防と治療の重要性
ロコモの原因になることが多い骨粗しょう症の予防には、食生活と運動が重要で、子供のうちからバランスの取れた食事でしっかり貯金し、軽度の運動でも継続することが大切であるとした。また、家の中で転倒し、骨折する事例が多いことから、転ばないような環境づくりをすることや、骨粗しょう症患者だけでなく、予備群(骨密度70%以上80%未満)のうちから治療を始めた方がいいという考え方も紹介した。

さらに詳しくは紙面PDFで

2014年10月27日19面

10月27日19面

かちまい公開セミナー2015 2015/1/29

長寿遺伝子をご存じですか?老化を防ぐ人体のヒミツ

 十勝毎日新聞社主催、札幌医科大学共催の公開セミナーが1月29日午後2時から、帯広市内のとかちプラザで開かれた。同大医学部長の堀尾嘉幸氏が「長寿遺伝子」に関して研究成果などを説明した。
 同大と十勝毎日新聞社は昨年5月、包括連携協定を結び、健康や疾病予防などの分野で情報発信を進めていく構想。今回は昨年10月の「ロコモティブ・シンドローム」に次ぐ第2弾の公開講座で、約150人が聴講した。堀尾氏のほか、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所の内藤彰彦所長がワインの健康機能性について講演した。

堀尾嘉幸(ほりお・よしゆき)

1955年10月9日 大阪府豊中市生まれ。81年弘前大学医学部卒業。85年大阪大学大学院医学研究科修了。同年大阪大学医学部附属病院基礎系医員、大阪大学医学部薬理学第二教室助手。88~90年米国のスタンフォード大学、ノースウエスタン大学へ主任研究官として留学。97年大阪大学医学部薬理学第二教室助教授、99年札幌医科大学医学部薬理学講座教授、2008年札幌医科大学医学部副学部長などを経て、14年4月から現職。

<講演要旨>

  1. 長寿遺伝子(サーチュイン)の研究はここ10年から15年で急速に進んできた。
  2. がんと老化には密接な関係がある。がん抑制遺伝子の「p53」は、がんの発生を抑制するが、老化を促進する因子でもある。
  3. 細胞は老化する。老化細胞は、分裂できずに増殖できない。また、いろいろなもの(ホルモンなど)を分泌し、周囲の細胞を老け込ませることもある。
  4. 活性酸素は細胞や染色体異常を引き起こす要因になる。マウスの実験では、この活性酸素を除去するSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)の活性が低いものは寿命が短い。
  5. 摂食制限をすると、SODが減らず、寿命が伸びることが、動物実験で分かっている。
  6. 赤ワインに含まれるレスベラトロール(ポリフェノールの一種)は、長寿遺伝子(SIRT1)を活性化する。マウス実験では、高脂肪食による肥満や高カロリー食による寿命短縮を抑制する結果がでている。心不全ハムスターの実験でも、延命効果があることが分かった。筋ジストロフィーの治療効果もある。
  7. 長寿遺伝子はみんなが持っている。大事なことは、まず食べる量を減らすこと。それと、運動も大事。エネルギーを消費すると、長寿遺伝子は活性化する。あとは、思い煩うことをせず、笑いを常に心掛けることではないか。

[主催]十勝毎日新聞社
[共催]札幌医科大学
[後援]十勝医師会、帯広市医師会

健康推進セミナーで島本学長が講演 2015/9/5

十勝あるくミルクプロジェクト

 歩くことと、牛乳などに含まれるたんぱく質の摂取を組み合わせた健康増進を提唱する「十勝あるくミルクプロジェクト」の事業として9月5日、健康推進セミナーが帯広市内のとかちプラザで開かれた。このプロジェクトは子供から高齢者まで誰もが手軽に参加できる「歩く」という行為と、十勝の主要産品の1つである牛乳を用い、住民の健康を促進する狙い。
 セミナーの第1部では、札幌医科大学の島本和明学長が「歩くことと健康について」をテーマに語った。

第1部

歩くことと健康について
島本 和明

講師
札幌医科大学
学長
島本 和明 氏

第2部

楽しい歩き方 実践講座
長谷川 昌二

講師
帯広市 健康推進課
健康運動指導士
長谷川 昌二 氏

[主催]
 十勝あるくミルクプロジェクト実行委員会
 (帯広市、一般遮断法人 帯広市文化スポーツ振興財団、十勝毎日新聞社)
[後援]
 フードバレーとかち推進協議会、株式会社 オカモト
[事務局]
 十勝毎日新聞社 事業局 TEL:0155-22-7555

※2015年9月時点の記事です。島本氏は2016年3月末で学長を退任されました。

認知症予防講座 - 脳の健康を考える -  2015/11/11

かちまいエイジングケア・セミナー2015

 十勝毎日新聞社と札幌医科大学による包括連携協定事業「かちまいエイジングケア・セミナー2015」が11月11日午後2時から、帯広市内の北海道ホテルで開かれた。同大医学部神経内科学講座の齊藤正樹助教(日本認知症学会認知症専門医・指導医)が認知症予防について解説した。講演要旨記事

講師:齋藤正樹 氏

札幌医科大学医学部 神経内科学講座助教授。日本認知症学会 認知症専門医・指導医。

[主催]:十勝毎日新聞社
[共催]:札幌医科大学
[後援]:帯広市、帯広保健所、十勝医師会、帯広市医師会

札医大附属病院・山下病院長に聞く 2016/1/5

脊髄損傷に神経再生治療

 交通事故やスポーツ事故、高所からの転落事故などで脊髄を損傷し、運動麻痺などの後遺症に苦しむ患者は全国で年間約5000人が発生するという。現状では有効な治療法がないが、札幌医科大学では山下敏彦教授(附属病院長・整形外科学講座)らの研究グループが、脊髄損傷に対する神経再生医療に取り組んでいる。患者自身から骨髄液を取り出し、骨髄間葉系幹細胞と呼ばれる細胞を培養した上で患者に再投与すると脊髄が再生するという画期的な治療で、日本で初めてとなる神経再生の医薬品を目指す治験として注目されている。山下教授にこの治療法について聞いた。(聞き手・道下恵次)電子版記事

山下敏彦(やました・としひこ)

1958年生まれ。札医大大学院医学研究科修了。88年に米国ウェイン州立大学バイオエンジニアリングセンター博士研究員、83年に札医大医学部整形外科講座に入り、2002年に同教授。14年4月から附属病院長。

道下 脊髄損傷とは。

山下 脊髄損傷は交通事故やスポーツ事故等で背骨が折れてその中にある神経が傷ついてしまうこと。こうした中枢神経は一端傷つくと回復しないといわれ、一生ハンディキャップを背負って生きていかなければならない。全国で年間5000人発生するといわれ、医療費もかかるし、その後のケアにかかわる社会保障費もかかる。そうした面からも社会的問題にもなっている。何より治療法がないということが問題なので、全世界的に脊髄損傷の研究が行われている。

道下 札幌医科大学ではどのあたりに着目して研究しているのか。

山下 本学の神経再生医療学部門では、20年前から神経細胞を再生させるという研究に取り組んできた。(H25年3月より)脳梗塞の神経再生に関する治験を開始している。この研究成果に基づき、数年前(H26年1月)よりその同じ手法を用いて脊髄損傷に応用できないかということで取り組んでいる。
 まずは患者の骨盤から骨髄液を取り出し、その中からいろいろな組織に分化する能力を持つ幹細胞を取り出して特殊な技術で1万倍に培養する。それを点滴で静脈内に戻すことによって損傷した脊髄に幹細胞が到達し、脊髄が再生するという理論だ。

道下 どのようなメカニズムで再生するのか。

山下 血流に投与した幹細胞には身体の損傷部分に集まるという性質がある(ホーミング効果)。まずは早期に幹細胞が損傷部分に達すると幹細胞からいろいろなファクター(成長因子)が放出される。それは神経を回復、保護するファクターや炎症を抑えるファクターだ。それが放出されると急性期の脊髄損傷を食い止める、あるいは回復させる効果がある。また、数週間後に到達した幹細胞そのものが神経に分化して再生するという複数の段階によるメカニズムを考えている。

道下 患者にとっては期待の持てる画期的な治療だが。

山下 神経再生はいろいろ研究されているが、ほとんどが損傷した神経部分に直接幹細胞を注入する研究だ。直接注入は手術が必要であったり、再び神経が傷つくこともあるので患者にとっては負担が大きい。本学の場合は点滴で注入し、血流に乗った幹細胞が損傷部分に到達するということが特徴だ。患者の負担が少ない治療といえる。
 本学では日本で初めてとなる治験という形で神経再生の研究が進んでいる。近い将来に実用化できるのではないかと期待している。現在は急性期の脊髄損傷を対象に行っているが、将来的には慢性期の患者や、さまざまな神経疾患に応用範囲を広げていけると考えており、さらに研究を進めていきたい。

塚本新学長に聞く 2016/4/1

 道内での地域医療の一翼を担う札幌医科大学は「進取の精神と自由闊達な気風」「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」との建学の精神の下、多くの優れた医療者を教育し、地域に輩出してきた。4月1日からは塚本泰司名誉教授が第3代目の新理事長・第11代目の新学長に就任し新たな体制でスタートした。今後の札幌医大が目指すべき医療攻究と地域への貢献について塚本新学長に聞いた。(聞き手・札幌支社長 脇坂篤直)

塚本泰司(つかもと・たいじ)

1949年旭川生まれ。医学博士。73年札幌医科大学医学部卒。95年同大医学部泌尿器科学講座教授、同大付属病院長を経て、2013年同大学を退職。同年慶応義塾大学大学院経営管理研究科に入学。15年3月同大大学院経営管理研究科修了、経営学修士。16年4月から札幌医科大学理事長・学長

脇坂 まずは新学長就任にあたって抱負を。

塚本 建学の精神が我々の進むべき道であり、これを充実させることが第一。特に学生や若い医師を集めるには優れた研究が必要だ。質の高い医療を提供するためにも研究という基盤がないといけない。研究には短期と中長期目標があるが、本学では再生医療やがんワクチンの先端研究が行われ、ようやく花開いてきた。5~10年後に花開く研究の種をまいていきたい。
 それと同時に地域医療への貢献が重要だ。まだまだ北海道の場合は医療者の数が足りず、そこを充実させたい。地域医療の充実のためにはマンパワーがいる。質の高い学生を集めるためにも大学が魅力的でなければならないし、そのためには優れた臨床も実践していかなければならない。今まで本学が取り組んできたことに加え、現代にマッチする状況を考えながらプラスアルファしていければと思う。

脇坂 学長ご自身はこれまでどのような医療研究に取り組まれたか。

塚本 私の専門は泌尿器科。1980年前半から北見や後志管内で、前立腺肥大症や前立腺がんの集団検診を行ってきた。今は見つけやすくなってきたが、当時は前立腺肥大症や前立腺がんは今ほど知られておらず、道内で集団検診ができたということは非常に意義があったのではないかと思う。それが発展して90年ぐらいから道内の漁村で、前立腺肥大症と前立腺がんがどの程度いるのか、米国の病院と共同研究した。米国と日本のデータを日本で初めて比較研究し、それが高く評価された。泌尿器科のがん治療に関しても基礎研究や治療法を確立してきた。札幌医大の泌尿器科手術を全国トップレベルにすることができたと思っている。

脇坂 札幌医大が目指す将来像とは。

塚本 建学の精神にある医学・医療の攻究と地域医療への貢献が我々が目指す道なので、理念としては最高の医科大学を目指したい。これを実現するためには何が必要か。大学も付属病院もハード面はしっかりしてきた。我々が与えられた課題はその施設をどう活用して建学の精神に結び付けるかということ。少子化の影響と社会ニーズが変わってきていることもあり、大学の競争は激しくなり、立ち位置も揺らいでいる。どういう学生を選抜してその学生を教育し、どういう医師に育てるのかが我々の目指す将来像に結びつく。資質ある若い医師を育てていき、最高レベルの医科大学に一歩でも近づけるよう努力したい。

脇坂 2014年に十勝毎日新聞社と包括連携協定を結んだが、今後の取り組みプランなどは。

塚本 地域への情報提供は非常に重要だと思っている。地域に医療、医学の成果を還元することによって住民に病気に対する意識を高めてもらう。公開講座や講演などでお手伝いできることはこれかもやっていこうと思っている。地域の要望も聞かせてもらい、十勝の方々への情報発信を積極的に考えていきたい。

塚本学長が講演 医療セミナー2016 2016/7/28

知っていますか?尿から分かる健康状態

 尿をテーマにした医療講演会「知っていますか? 尿からわかる健康状態」が28日、帯広市内のとかちプラザで開かれた。前立腺がん治療など最先端医療に携わる札幌医科大学理事長・学長の塚本泰司氏が、尿から読み取れる病気のサインについて講演した。
 十勝毎日新聞社と札幌医大の包括連携事業の一環で、210人が聴講した。塚本氏は、尿の色や量、尿の出方からわかる体の状態について解説。血尿は、血尿以外の症状の有無で原因の病気が変わるとし、「膀胱がんを見逃さないことが重要」と述べた。

[主催]
 十勝毎日新聞社、共催・札幌医科大学

塚本 泰司

講師
札幌医科大学
理事長・学長
塚本 泰司 氏

札医大の研究室から(1) 鳥越俊彦教授に聞く 2016/10/14

 がん細胞には“女王バチ”の役割を果たす幹細胞と“働きバチ”細胞があり、あくまで幹細胞を退治しない限りがんの根治や予防はできない-。そんな研究が札医大で進められている。
 医学部病理学第1講座の鳥越俊彦教授に「がん幹細胞とがんの予防医学」について聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

鳥越俊彦(とりごえ・としひこ)

 1960年鳥取県生まれ。84年防衛医科大学校医学科卒業。90年米国ペンシルバニア大学医学部研究員、92年米国ラホーヤがん研究センター研究員、93年自衛隊札幌病院診療科などを経て2001年より同大学同学部病理学第1講座助(准)教授。15年から現職。

浅利 「がん幹細胞」とは、どのようなものか。

鳥越 がん組織を形成するがん細胞は、いわゆる“働きバチ”だけだと考えられていたが、最近の研究で“女王バチ”に相当するがん幹細胞の存在が明らかになった。いわゆる幹細胞は、組織の修復再生を担う正常細胞にもあって、ストレス耐性が強いという特徴がある。善玉か悪玉かの違いはあれ、その強さを持つ点で共通している。

浅利 がん幹細胞はどのような影響を及ぼすのか。

鳥越 いくら抗がん剤や化学療法で働きバチのがん細胞を退治しても、女王バチであるがん幹細胞が存在する限り、それが再び巣を作ったり、他の臓器などに飛んで巣を作ったりしてしまう。
 だから近年世界のがん研究では、働きバチは放っておいて女王バチであるがん幹細胞の退治に重きを置くのが主流になっている。

浅利 そのがん幹細胞を見つけ出す研究は、どの程度進んでいるのか。

鳥越 がん幹細胞は、抗がん剤にも化学療法にも抵抗力があり手ごわい相手なので、免疫の力で抑制する研究を進めている。私たちの研究で、がん幹細胞だけの目印として、男性の精巣にしか見られない特殊な遺伝子を持つことが明らかになり、それを約6種類見つけることができた。
 この目印をワクチンとして免疫することで、がん幹細胞をねらい撃ちする「がん予防ワクチン」の開発を進めている。

浅利 「がん予防ワクチン」のもつ特長はどのようなものか。

鳥越 今までは、例えば乳がんの場合、手術によってがんの主病巣を完全に取り切った後でも、ミクロレベルで他臓器へ転移している場合があるため、厳しい抗がん剤治療を強いられていた。しかし、このワクチンを投与すれば「細胞障害性T細胞」という、がん幹細胞を直接退治する細胞を活性化させることで、ミクロレベルのがん幹細胞を見つけて攻撃できるので、副作用の厳しい抗がん剤治療を行う必要がなくなる。
 近年「ニボルマブ」という免疫抑制を解除する新しい免疫治療薬が開発され、現在国内では悪性黒色腫と肺がん、腎がんの治療に承認されているが、効果が期待できるのは約3割のがん患者で、しかもがん予防効果は期待できない。また、1回の投与で約150万円と高価で副作用もある。「がん予防ワクチン」が実用化されれば、私たちが重きを置く「がんの治療だけでなく予防」が可能になり、安価かつ副作用もないというメリットがある。

浅利 最後に、十勝の読者に向けて。

鳥越 再生医療や免疫細胞療法などといった最先端の医療を施すには特殊な施設が必要で、道内では札幌に集中している現実がある。しかし、私たちが目指すワクチンは、どこの町のクリニックでも注射1本で簡単かつ安価に治療や予防が施せる。
 予防医療の確立とともに、医療の地域格差や貧富格差を解消する薬であることも目指しているので、今後に期待してほしい。

札医大の研究室から(2) 舛森教授に聞く 2016/11/11

 心の性と身体の性が一致しない「性同一性障害(GID)」。近年メディアなどで取り上げられる機会が増えたが、ごく身近に悩みを抱える当事者が多くいるといった現実は、あまり知られていない。
 2003年に道内で唯一専門外来を立ち上げてチーム医療に取り組んでいる、医学部泌尿器科学講座の舛森直哉教授に話を聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

舛森直哉(ますもり・なおや)

 1964年胆振管内むかわ町生まれ。88年札幌医科大学医学部卒業。94年同泌尿器科学講座助手、98年米国バンダビルド大学研究員、2001年札幌医科大学医学部泌尿器科学講座講師、06年同助教授を経て、13年から現職。

浅利 「性同一性障害」とは何か。

舛森 人は生まれる際、身体的性別の典型として男性と女性がある。そこに性の自己認識(性自認)という心の性別も重なり、それらが一致していると自覚する人が割合的には多い。しかし、生まれつき身体の性別と性自認が一致しないと感じる人がいて、その状態だと定義している。

浅利 そのメカニズムは分かっているのか。

舛森 明確には分かっていないが、胎児期の脳の性分化の過程で何らかの原因により身体と心の性にずれが生じるためではないかと考えられている。親の育て方が悪いとか、そういった後天的な要因で性自認が変わるわけではない。

浅利 どのくらいの割合の方がいるのか。

舛森 はっきりとした統計はないが、私たちが13年前に専門外来を始めてから500人以上の方が受診している。北海道の人口が約540万人なので1万人に1人はいることになるし、受診していない人を含めると世間一般に思われているよりもはるかに多いだろう。

浅利 性同一性障害と同性愛についても混同されがちだが、その違いは。

舛森  L(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシャル)T(トランスジェンダー)などと分類されることもあるが、前の3つは性自認に不一致はない性的指向。トランスジェンダーがすべてGIDとは限らないが、性同一性障害は、性自認そのものに違和感がある状態。性自認と性的指向は分けて考えなければならない。

浅利 GID治療はどのようなものか。

舛森 以前は、精神科で心の性別を身体の性別に合わせようとする治療が行われていたが、現在は、心の性別に身体の性別を合わせようとする治療が原則。性ホルモンを投与することで心の性別に近づけるが、外性器は大きくは変化しないので、外陰部の改変を望む場合には性別適合手術を行うこともある。

浅利 治療での問題点は。

舛森 現在それらの治療は健康保険適用外のため、かなり高額な治療や入院費がすべて自己負担になる。そのため、手術料金の安い海外で行う人もいるが、合併症などのリスクが高い。現在、これら治療の保険適用を求めて関連学会などと連名で厚労省に要望書提出の準備を進めている。保険適用によって治療の敷居が下がるだけでなく、一般的な理解も進むと期待している。

浅利 最後に、十勝の読者に向けて。

舛森 以前より理解は進んできていると思うが、まだまだ差別や偏見は存在する。たとえば性別を記入する際やトイレの問題など、当事者は日々の生活で生きづらさに直面している。まず「そういう人がいる」と知ることが大切。道内での専門外来は私たちだけという状況で、今後は受け皿の少なさも変わっていけばと思う。

札医大の研究室から(3) 長峯教授に聞く 2016/12/9

 たくさん人がいる中で、自分の名前を呼ばれた際にそこだけは認識できるのに、他の会話の内容は入ってこない―。
 パーティー会場にいる状態になぞらえて「カクテルパーティー効果」と呼ばれる、人間の持つこうした能力について研究する医学部神経科学講座の長峯隆教授に話を聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

長峯隆(ながみね・たかし)

 1957年鹿児島県生まれ。82年京都大学医学部卒業。90年同大医学研究科脳統御医科学系脳病態生理学講座助手、2000年同附属高次脳機能総合研究センター臨床脳生理学領域助手、01年同附属高次脳機能総合研究センター臨床脳生理学領域准教授を経て、08年から現職。

浅利 カクテルパーティー効果とは、どういった仕組みで起きているのか。

長峯 私たちは、読書をする際に点として注視する周りの10文字程度は認識できるとされている。聴覚も同様で、たとえば左に意識を向けている時は、自然と右への注意が散漫になっている。つまり、注意をどこに当てるかを意識的に制御することができる。

浅利 音に関して、脳内では何が起きているのか。

長峯 左右両耳で同時に聞いているとき、人はあまりどちらの耳から入るかを意識していない。ところが、パーティー会場で左と右から別々の会話が入ってきた場合、注意を向けた特定の会話に集中して他は無視するように脳の聴覚野で調整を行っている。私自身も実験の被験者となり実感したが、はっきり自覚できる場合もあるし、無意識の領域で必要なものとそうでない情報を切り分けていることもある。

浅利 いくつくらいのことに注意を払えるのか。

長峯 通常、それぞれの耳で2つずつの情報を把握できるとされている。よく、聖徳太子が10人の話を一度に聞いたという説話があるが、実際オーケストラの指揮者はすべての楽器の音を同時に聞き分けられるという通り、意識を傾けていれば、人間はかなりの音に対して別々に反応できることが分かっている。

浅利 注意を向けていない部分はどう扱っているのか。

長峯 われわれは日常生活で、外部環境の状態について浅く広く情報を受け取っているが、特に意識しているわけではない。しかし、歩いていて突然横から大きな音がしたら、とっさに振り向く。特に注意していなくても、突然不意に起こる変化に無意識に反応できる。これは受動的注意と呼ばれる。人間が持つ生体防御能力のひとつといえる。

浅利 能力の個人差や、訓練で向上の可能性はあるか。

長峯 ひとつのことに集中しやすい人、全体に注意が行きがちな人というように個人の傾向はあるが、誰しも"注意の焦点化"や"情報の選択化"を脳の中で行っている。今ある能力をさらに上げる目的については賛否両論あるが、失われた能力の回復や、危険を察知する能力を身につけるという意味で、解明された脳の仕組みを応用することはできるのではないか。

浅利 最後に、十勝の読者に向けて。

長峯 われわれが研究しているのは、人が体感できることが、脳の中でどのように行われているのかということ。脳を含め、人の機能は千差万別。たとえば脳外科手術をする際の手がかりとして、その個性を司る仕組みに極力近づくことで治療の手かがりにもしようとしている。気になることがあれば是非訪ねて頂きたいし、私たちが出向いて説明する機会もあればと思う。

札医大の研究室から(4) 櫻井教授に聞く 2017/1/13

 遺伝子や遺伝がもたらす病気への影響について研究する「遺伝医学」。札幌医科大学では専門の遺伝外来があり、多くの人が気軽に相談することができる。
 遺伝といえば、揺るがしがたい決定的要素のように思いがちだが、実際はどんな研究なのか。遺伝医学の櫻井晃洋教授に聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

櫻井晃洋(さくらい・あきひろ)

 1959年新潟県生まれ。84年新潟大学医学部卒業。87年米国シカゴ大学甲状腺研究部、94年信州大学医学部老年医学講座助手、2003年同社会予防医学講座遺伝医学分野助(准)教授を経て、2013年から現職。

浅利 遺伝医学とは具体的にどんなものか。

櫻井 人の体の特質や特徴が、世代を超えて伝えられていくメカニズムを究明する"タテ"の面と、人は一人ひとり皆違うという多様性の理由を遺伝子のレベルで明らかにする"ヨコ"の面の両方を究明するものだと定義づけている。

浅利 遺伝要因はどのくらい私たちの健康に影響するのか。

櫻井 すべての病気や健康状態には、生まれつきの体質(遺伝要因)、生活習慣や環境(環境要因)、加齢(時間要因)という3つの要素が影響する。遺伝要因だけで発病する病気もあるし、中毒や事故のようにほぼ環境要因だけが関係するものもある。実際には遺伝要因がまったく関係しない病気はほとんどない。ただ、その割合や医療として関与できる程度は病気によってさまざま。
 たとえば、患者数の多い高血圧や糖尿病でも、同じような食生活や運動習慣、塩分摂取を続けても病気になる人もならない人もいる。そこは、それぞれがもつ遺伝要因が影響しているが、その部分に医療として介入できるかといえば、そこまではまだできない。

浅利 では、医療として有効なのはどういった場面か。

櫻井 遺伝要因の関与が大きい、いわゆる遺伝性の病気の中には、遺伝子の情報によって診断が確定するものもや治療方針が決まるものが増えてきた。たとえば、年間約9万人が発症する乳がん患者のうちの5%は遺伝性の体質が原因で発症しているとされている。遺伝性であることが分かった場合には術式の選択や放射線治療の是非、さらに最近では発症前の予防的乳房切除なども考慮されるようになっている。また、遺伝性疾患では兄弟姉妹や子どもなども同じ体質を持っている可能性があり、遺伝子の情報をもとに血縁者の病気の早期発見や早期治療、あるいは予防的治療も可能になる。

浅利 遺伝子や遺伝的要素は人にとって決定的なものというイメージを持つが。

櫻井 むしろ私たちの健康状態や体質、能力などで遺伝要因が関与する程度は、多くの人が考えているよりも小さい、人は遺伝子だけでは決まらない、ということを強調したい。最近はインターネットなどで手軽に病気のなりやすさや体質を調べるという遺伝子検査サービスが増えているが、科学的根拠は極めて乏しく、占いと大して違わない。
 われわれ社会の認識として「人はみな違い、だからこそ一人ひとりは唯一のものとして尊重されなければならない」という価値観を共有することが大前提。多様性の一側面として遺伝性の病気がある、というフラットな受け止め方が大切だと思う。

浅利 最後に、十勝の読者に向けて。

櫻井 すべての人は例外なく数十の遺伝性の病気の要因を持っており、決して特別なものではない。とはいえ、ひとたび当事者になれば戸惑いや心配を抱くのは当然のこと。遺伝に関してはまだ誤解も多い。どんな些細なことでも良いので、一人で悩みを抱えず専門の外来で正しい知識を得てほしい。私たちの遺伝外来は、心配ごとのお手伝いをするところ。気軽に専用ダイヤル(011-688-9690)に電話をして頂きたいと思う。

札医大の研究室から(5) 下濱教授に聞く 2017/2/10

 老若男女問わず多くの人が気にする「物忘れ」と「認知症」。病気に分類されない物忘れと、病気である認知症との違いは何で、その境目はどこにあるのか。専門分野として研究を続ける、神経内科学講座の下濱俊教授に聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

下濱俊(しもはま・しゅん)

 1956年東京都生まれ。81年京都大学医学部卒業、87年同大学院医学研究科修了、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部神経科学部門研究員。2000年京都大学大学院医学研究科脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座臨床神経学領域講師、01年同准教授を経て、06年から現職。

浅利 「物忘れ」と「認知症」の違いは何か。

下濱 「物忘れ」は、さっき聞いたことを忘れてしまうとか、昨日の出来事を忘れてしまうといった記憶障害の一種。「認知症」の場合は、それに加えて洋服を着られなったり、計画を立てて実行・決断といった社会生活を営む上で必要な複数の認知機能が障害されて支障をきたすようになったりする状態をいう。
 例えば、前日に日ハムの野球観戦をして、ピッチャーが誰か思い出せないのは「物忘れ」で、行ったこと自体を忘れてしまうのが「認知症」だ。

浅利 認知症の判断はどのように行うのか。

下濱 ご家族が、今まで見られなかった言行や感情の変化が気になるとか、置き忘れや同じことを繰り返し聞くといったことが多くなり、心配して受診するケースが多い。診断では、例えば今日の年月日を言ってもらう、3つの言葉を挙げて別の会話を挟んで再度質問する、などといった簡単な神経心理テストを行い、見当識や記銘力が障害されていないかを診る。

浅利 診断されてから重要なことは何か。

下濱 原因が何かを明らかにすることが、非常に重要だ。ひと口に認知症と言っても、全体の約6割を占めるアルツハイマー型のほか、脳梗塞や脳出血後に起こる血管型、パーキンソン病のような症状をきたすレビ-小体型など幾つかある。ほかに、転倒して数か月たって物忘れ症状が出るケースもあるが、この場合は外科的処置で元の状態に戻る。コンピューター断層撮影(CT)やMRI検査で脳の形態異常の原因を明らかにした上で、適切な治療やケアをすることが重要だ。

浅利 本人や家族に必要なのはどんなことか。

下濱 アルツハイマー型をはじめ認知症は、現代医学でも完治や進行を食い止めることは難しいが、早期の診断と発見により投薬などで進行を抑制することが可能になっている。また、脳血管障害や糖尿病、高血圧といった生活習慣病を合併していると進行を早めるので、それらの治療や適度な運動、食事の見直しも有効だ。
 家族はどうしても認知症になる前の状態を思い出し「どうしてこうなったのか」「しっかりして」などといいがち。まず、認知症という病気なんだということを理解して、しからないなど適切な接し方を知ることがとても大切になってくる。

浅利 最後に、十勝の読者に向けて。

下濱 2025年には日本の認知症患者は700万人を超えるといわれている。誰しも年齢を重ねると、物忘れの症状が出てくるのは自然なこと。一人で悩まず、かかりつけ医の紹介などで「もの忘れ外来」を始め神経内科や精神科、脳外科といった脳の疾患の専門外来を訪ねてほしい。
 そして、病気とどう向き合い、過ごしていくかは、デイケアをはじめとした福祉施設や行政でも相談できるので、それらを積極的に利用して、本人も家族も無理のない介護など長い目で見通していくことが大切だ。



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