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大樹から宇宙へ(3)「植松さんの宇宙への挑戦」

「子供たちからの手紙は真剣に読んでいます」と話す植松専務

 「『どうせ無理』を『だったら、こうしてみたら』に変えてみて」。CAMUI(カムイ)型ハイブリッドロケットの開発に関わる植松電機(赤平市)の専務・植松努さんは、同社への見学者や、自身が講師を務める講演会、モデルロケット教室の参加者に常にこう強調する。

 植松さんは、宇宙開発の経験を伝える教育活動にも力を注ぐ。評判は口コミで全国に伝わり、昨年だけでも同社への見学者は約1万人、植松さんの訪問先は約260カ所になった。カムイロケットの開発に携わり始めた2005年ごろから本格化、これまで全都道府県を渡り歩き、十勝でも半数ほどの自治体を訪れたことがある。

 植松さんが宇宙開発に関わる真の狙いは、子供たちへの教育にある。「今の教育は失敗を避けさせる教育。自分で問題解決できない人が増え、何でも諦めてしまう。宇宙開発は未知と失敗であふれ、問題解決能力を身に付けるのにいい」と話す。

 子供らには自社でロケットエンジンの燃焼試験を見せたり、モデルロケットの飛ばし方を教え、宇宙開発の一端に触れてもらっている。

 講演会などの後には、子供たちからたくさんの手紙が届く。その量は年間で、A4判の用紙で厚さ1メートルほどになるという。「1枚ずつしっかり読んでいる。話を聞いてくれた子供たちが、きっと何かをやらかしてくれると思う。例えば宇宙飛行士を目指すため、どうしたらいいかということを真剣に考えてくれるはず」と期待する。

 宇宙開発を“手段”と位置付けながらも、植松電機は独自の取り組みを進め、敷地内には本業より宇宙関係の施設の方が多い。05年には敷地内に、微少重力実験施設を北大と共同で整備した。現在は国内唯一の施設となり、北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)の運営で、国内を中心とする大学や研究機関が実験に使用している。

 同社は、06年に国内から打ち上げられた道産衛星HIT-SAT(ヒットサット)の開発にも関わった。人工衛星の宇宙ごみが問題となる中で、ヒットサットは世界で初めて宇宙ごみにならなかった人工衛星だという。植松さんはカムイロケットを使い、2万個以上あるとされる宇宙ごみを処理する構想も思い描いている。

 「『どうせ無理』という言葉をこの世からなくしたい。誰もが無理だと思う宇宙開発を自分たちが実現したら、『どうせ無理』という言い訳はできなくなるのでは」。植松さんの宇宙への挑戦は続く。(佐藤圭史)

<植松電機>
 植松努専務の父・清さんが1962年、芦別市で電気機械の修理業として開業。植松専務は94年に実家に戻り、親子2人で事業を続けている。99年に株式会社化。2000年からはリサイクル作業用として重機に取り付けるマグネットを製造、会社は軌道に乗り、現在、社員18人を抱える。

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