十勝の災害の特徴
十勝は過去、「十勝沖地震」などが周期的に発生し、大きな被害に見舞われてきました。また、活火山や海岸に面する町村を擁し、火山や津波災害にも注意する必要があります。事前に十勝の災害の特徴や各市町村の防災対策ついて学ぶことで、被害を回避したり小さくすることができます。できることから備えましょう。
繰り返す十勝の「大地震」
十勝はこの100年の間、マグニチュード6~8クラスの地震が繰り返し起きています(表1)。2003年の十勝沖地震でも、十勝4町で震度6弱、沿岸部は津波を観測し、280人(重軽傷合わせて)もの負傷者を出しました。交通が寸断され、停電や断水など甚大な被害を受けました。〈写真〉2003年十勝沖地震(2003年9月26日)
西暦 | 震央名 | 規模 | 主な被害 |
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1915.3.18 | 十勝沖 | M7.0 | 帯広市南部と芽室村で家屋倒壊、死者2人 |
1926.9.5 | 十勝沖 | M6.8 | 広尾で震度5 |
1930.12.13 | 日高支庁中部 | M6.3 | 広尾で震度5 |
1952.3.4 | 釧路沖(十勝沖地震) | M8.2 | 帯広、広尾で震度5、死者・行方不明者33人、家屋全壊815、同流出91 |
1968.5.16 | 三陸沖(1968年十勝沖地震) | M7.9 | 広尾で震度5、十勝港で津波170cm |
1968.5.16 | 青森県東方沖 | M7.5 | 広尾で震度5(上の余震) |
1970.1.21 | 十勝支庁南部 | M6.7 | 帯広・広尾で震度5 |
1987.1.14 | 日高支庁東部 | M7.0 | 十勝で建物破損多数 |
1993.1.15 | 釧路沖(平成5年釧路沖地震) | M7.8 | 帯広・広尾で震度5、道路などの損壊 |
1994.10.4 | 平成6年北海道東方沖地震 | M8.1 | 広尾で震度5 |
2003.9.26 | 平成15年十勝沖地震 | M8.0 | 幕別、豊頃、鹿追、忠類で震度6弱、管内の負傷者280人 |
2004.11.29 | 釧路沖 | M7.1 | 更別村で震度5弱、管内12市町村で震度4 |
2011.3.11 | 平成23年東北地方太平洋沖地震 | M9.0 | 帯広など管内7市町村で震度4、沿岸で津波、4町に避難指示 |
将来、発生確率が高い地震も
国の地震調査研究推進本部は、日高・十勝地域に被害を及ぼす地震についてホームページで公開しています。(表2)。中でも、23年前の1993年に発生し、帯広や広尾で震度5を観測した「釧路沖地震」(M7.8)が該当する「千島海溝沿いの沈み込んだプレート内のやや深い地震」は、30年以内の発生確率は70%。この地震の平均活動間隔は27.3年で、注意が必要です。十勝沖や根室沖の「ひとまわり小さいプレート間地震」も同80%(同間隔17.5年)と高確率。1915年に十勝で死者2人を出した広尾沖の地震(M7.0)もそのひとつです。一方、「十勝沖」の領域で発生する地震(同間隔72.2年)は、2003年に「十勝沖地震」(M8.0)が起こったことから、2~6%と低い確率となっています。〈写真〉2003年十勝沖地震。震度6弱の揺れで堤防や道路が陥没した(2003年9月26日)
地震 | マグニチュード | 30年以内の地震発生確率 | ||
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海溝型地震 | ||||
千島海溝沿い | 根室沖 | 7.9程度 | 連動8.3程度 | 50%程度 |
十勝沖 | 8.1前後 | 2~6% | ||
ひとまわり小さいプレート間地震(十勝沖、根室沖) | 7.1前後 | 80%程度 | ||
ひとまわり小さいプレート間地震(色丹島沖・択捉島沖) | 7.1前後 | 90%程度 | ||
沈み込んだプレート内のやや浅い地震(十勝沖・根室沖・色丹島沖・択捉島沖) | 8.2前後 | 30%程度 | ||
沈み込んだプレート内のやや深い地震(十勝沖・根室沖・色丹島沖・択捉島沖) | 7.5程度 | 70%程度 | ||
三陸沖から房総沖 | 東北地方太平洋沖型 | Mw8.4〜9.0 | ほぼ0% | |
三陸沖北部から房総沖の海溝寄り(津波地震) | Mt8.6−9.0前後 | 30%程度(特定海域で7%程度) | ||
三陸沖北部から房総沖の海溝寄り(正断層型) | 8.2前後 Mt8.3前後 | 4〜7%(特定海域で1〜2%) | ||
三陸沖北部 | 8.0前後 Mt8.2前後 | 2〜20% | ||
三陸沖北部(繰り返し発生する地震以外の地震) | 7.1〜7.6 | 90%程度 | ||
内陸の活断層で発生する地震 | ||||
十勝平野断層帯(主部) | 8.0程度 | 0.1〜0.2% | ||
十勝平野断層帯(光地園断層) | 7.2程度 | 0.1〜0.4% |
500年間隔で巨大津波
津波の堆積物から、十勝から根室の沿岸では、過去6500年の間に300〜500年間隔で大津波が押し寄せたことがわかっています。巨大地震によるもので、津波の高さは10~15メートル、海岸から2~3キロ以上に及ぶ広い陸域に及びます。直近では17世紀初頭(1600年代)に発生し、警戒が必要です。国の中央防災会議は「500年間隔地震」と呼んでいます。
活火山を抱える十勝
十勝地域は、丸山(上士幌町、新得町)や雌阿寒岳(足寄町、釧路市)の活火山を抱えています。また活火山の十勝岳の東部直下には、新得のトムラウシ地区が位置します。いずれも現在火山活動は静穏ですが、雌阿寒岳は2015年7月、6年ぶりに噴火警戒レベルが1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げられました(同11月に解除)。雌阿寒岳と十勝岳は、火山活動を24時間体制で常時観測・監視する常時観測火山となっています。〈写真〉噴気をあげる雌阿寒岳のポンマチネシリ火口(2015年9月25日)
御嶽山の火山災害で安全対策に注目
2014年9月27日に発生した御嶽山(長野・岐阜県境)の噴火は、死者57人、行方不明者6人(15年10月末)で、近代的な火山観測が始まって以降、1926年の十勝岳噴火に次ぐ災害となりました。御嶽山の噴火以降、全国各地で活火山への安全対策が注目されています。
政府の中央防災会議は16年2月、全国にある49の活火山の周辺地域を「火山災害警戒地域」に指定し、これまで以上に火山対策を進めることを決めました。十勝では、雌阿寒岳と十勝岳を擁する足寄と新得の両町が対象です。また、国土交通省北海道開発局は15年9月から、十勝岳の監視用カメラの映像をHP上で公開を始めました。一般公開することで、防災対策につなげる狙いです。