畜大卒の篠崎さん、国立感染症研究所で奮闘中 日英の獣医師免許取得
帯広畜産大を2023年3月に卒業し、イギリスで公衆衛生学の修士を取得した篠崎夏歩さん(26)が、今年から国立感染症研究所(本部東京)で働いている。畜大が持つ欧州獣医学教育機関協会(EAEVE)の国際認証を活用し、イギリスの獣医師免許を取得した初の卒業生。日本の獣医師免許も持ち、人と動物、環境の健康を一体として考える「ワンヘルス」の分野について「さらに活発にしていきたい」と抱負を話す。(中島佑斗)
1998年生まれ。高校卒業まで東京都内で過ごした。将来は獣医師になりたいと考えていたことや、自然豊かな環境が好きだったこともあり、2017年に帯広畜産大に進学。「自然の中に身を置き、勉強に集中できる環境。オープンキャンパスで訪れて、即決した」と振り返る。
畜大では寄生虫の研究室に所属。留学生が多く国際色豊かな環境や、卒業後の進路まで親身に考えてくれる研究室の雰囲気に引かれた。寄生虫について学ぶ中、「良い薬やワクチンができても、社会に行き渡らせる環境がないと感染症対策はうまくいかない。生活習慣なども見直す必要がある」と感じ、公衆衛生学の道に進んだ。
畜大卒業後、タイ・マヒドン大で3カ月のインターンを経て、23年9月にイギリス・ロンドン大衛生熱帯医学大学院に進学。24年9月までの1年間、疫学や統計の基礎を学んだほか、医療経済評価に関する論文を執筆。公衆衛生学の修士号を取得した。
イギリスの獣医師免許を取得したのが、大学院在学中の24年5月。帯広畜産大と北大の共同獣医学課程は19年、国際水準の獣医師教育を行っていると認証する「EAEVE」認証を取得。通常、イギリスの獣医師免許を取得するには試験に合格する必要があるが、同課程の卒業生は受験が免除される。篠崎さんは大学院を出た後の進路を悩んでいたことや、他大学の出身者で同様の枠組みを活用してイギリスの獣医師免許を取得した人がいたことを知ったことがきっかけで、取得を検討。関連書類の提出などを経て、取得に至った。
大学院卒業後はイギリスで獣医師として働く選択肢もあったが、「細菌、疫学、ウイルス、色々な分野のトップレベルの先生が集まっていて、感染症対策の面で魅力的」と今年1月から国立感染症研究所で働いている。「感染症サーベイランス研究部」に所属し、増えている感染症をまとめたり、週報や月報として発信する業務を担う。
関心を持っているのが、人、動物、環境の健康を一つに捉え、それぞれの関係者が協力し合って課題解決に取り組む「ワンヘルス」の分野。「どこまで運用されているのか疑問があり、この分野を活発にしたい。動物から人に移る感染症の対策などの仕事をする機会もあればうれしい」と意欲的に仕事に励んでいる。