デジタル農学で帯畜大に寄付講座設置 十勝地区農協組合長会
十勝地区農業協同組合長会(会長・山口良一JA豊頃町組合長)と帯広畜産大学(長澤秀行学長)は25日、同大農畜産技術実証センターに「十勝地区農業協同組合長会デジタル農学寄附講座」を設置すると発表した。管内の農業者らがスマート農業などに関する講義を受講するほか、十勝におけるスマート農業の導入・最適化に関する研究が行われる。設置期間は4月1日から2027年3月までの2年間で研究費総額1300万円。(大谷健人)
寄付講座は、民間企業などからの資金を人材や研究費などの基礎的資金とし、寄付者の意向に沿いながら大学が行う教育や研究プログラム。同大ではカルビーなど5者による寄付を基に、バレイショの安定・持続的な生産に向け、潜在能力の高い親系統を育成することを目的とした「バレイショ遺伝資源開発学講座」などが設置されている。同大によると、農業団体による寄付講座の開設は初めて。
講座開設のきっかけについて、山口会長と長澤学長は今年1月に死去した故有塚利宣前会長の遺志が反映されたものと説明。長澤学長は「昨年来、有塚氏から『学びの場である大学で農業者らに向けたこれからの農業に関する教育をしてもらいたい』との話があった」と語り、山口会長は「有塚氏はデジタル農業の推進を熱く語っていた。組合長会として遺志を引き継ぐため、寄付講座の設置を決めた」と語った。
講座の担当教員は、環境農学研究部門の佐藤禎稔特任教授と、次世代農畜産技術実証センター長の河野洋一准教授。教育分野では「デジタル農学基礎プログラム」を開講。初年度は講義・講習会(30時間)と視察研修(20時間)を行い、スマート農業の基本原理と体系的知識の習得、先進地の取り組みや課題の理解を目指す。すでに管内JAを通して参加者を募集しており、JA組合員と職員46人が受講を予定している。同大の学生については今後参加募集を行う。4月3日に開講し、農繁期を避けて講義や研修が行われる。
研究分野ではスマート農業研究の第一人者である佐藤特任教授を中心に、ドローンを活用した精密農業の実現や、ICT(情報通信技術)・データ解析技術を駆使した「十勝型デジタル農業の導入・最適化に関する研究」を行う。
佐藤特任教授は「昨年実施した無人運転トラクターの実証実験を見た有塚氏から『十勝農業に広めてほしい』という言葉があった。実験は完成形ではないので実用化に向けてさらに研究していきたい」と抱負を語った。