碧雲蔵 副杜氏、山根さんが帯畜大で博士号取得 「働きながら研究できる環境知って」
帯広畜産大学内にある酒蔵「碧雲(へきうん)蔵」で副杜氏(とうじ)を務める山根桃華さん(31)は、同蔵で働きながら同大の大学院生として日本酒に関する研究を3年間行い、博士(農学)の学位を取得した。大学関係者らも「博士号を持った杜氏職は全国的でも聞いたことがなく、珍しい」と喜んでいる。
山根さんは1992年札幌市生まれ。北海道大卒。大手化学メーカー勤務を経て、2020年5月に上川大雪酒造(上川管内上川町)に入社し、運営する同蔵に配属。現在、醸造の中核を担う一人だ。
大学内に酒蔵が開設されたのは全国初で、両者は教育研究の活性化などで協定を締結している。大学院への進学は会社側から薦められ決断し、面接などを経て21年春に合格。醸造微生物学などが専門の菅原雅之准教授の研究室に入った。
山根さんは同蔵での清酒醸造過程で生育する乳酸菌の解明などを研究。実験などを重ね、「系統的特徴とその多様性などを確認。酒質に及ぼす影響などを明らかにできた」とする。
博士学位の授与は3月31日付。証書は9月の授与式で贈られた。菅原准教授は「新たな日本酒開発につながる可能性がある意義ある研究。学生にもいい影響を与えてくれた」と評価。同蔵の若山健一郎杜氏も「後進に道を開いてくれた」と喜ぶ。
山根さんは「入社、進学と相次ぎ、2年間は酒造業務を覚えるので精いっぱい。3年目は研究を優先できたが、蔵の理解と菅原先生や学生の協力なしでは成し遂げられなかった」と感謝する。「今後も両者の連携の一助を担えれば」と意欲を語り、「働きながら研究できる環境があることも知ってもらいたい」と話した。(佐藤いづみ)