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本社政経部長が総括 十勝の統一地方選

民主主義に黄信号
 2023年の統一地方選が終わった。十勝での選挙戦を総括すると、比較的人口が多い地域の「低投票率」と、首長や議員のなり手不足からくる「無投票当選」の増加が目立った。これらは有権者と選挙に出馬する人たちとの関わりの濃淡や心理的な「距離感」に起因すると考えられる。

 低投票率は前半戦の知事選・道議選と、後半戦の帯広市議選および音更町議選で顕著だった。前回(19年)比で知事選(十勝管内)は7・7ポイント、道議選市区は9・5ポイント、十勝区も5・3ポイントそれぞれ落ちた。後半戦の帯広市議選は4・3ポイント減、音更町議選も6・4ポイント減で、いずれも5割に達せず史上最低を記録した。

有権者と接点希薄
 最初から勝敗が予見できた知事選や顔ぶれに新鮮味がなかった道議選市区だけではなく、6人が立起し“大票田・音更決戦”を繰り広げた十勝区や、41人中12人が落選した市議選でも軒並みダウン。これらの持つ意味は決して小さくない。

 十勝区はエリアが広大で、候補者と有権者の接点がどうしても希薄になる。市議選は選挙期間の1週間で有権者が41人と接して比較検討することはほぼ不可能。選ぶのに手間の掛かる選挙への興味関心が薄かったとみる。

 また、日本財団18歳意識調査では、選挙が予定されている地区に住む17~19歳で選挙があると認識していたのは約15%。若者にそもそも選挙自体が知られていない実態も見て取れ、この傾向が近年続いているとすれば、投票率の低下基調もうなずけ、選挙報道を担うメディアの一員として責任の一端を感じる。

 「無投票当選」は前回と比較し、町長選は7町村中五つと二つ増え、町村議選は15町村中、4から一気に9町村に増えた。町村議の当選議員全181人に対し、無投票当選は106人、58・56%を占める。実に1・7人に1人が有権者の審判を受けることなく議員になった。
 議員の「なり手不足」では、人口減により農村地帯など地域ごとに有力者たちが話し合い、有望な一人を推挙して送り込む従来の形が徐々に成り立たなくなってきた側面も見逃せない。また町村では議員報酬の低さと仕事とのバランス、意欲ある女性や若者が出馬しやすい環境など、態勢が十分整っているとは言い難い。

 これらの課題を解決するには、候補、有権者双方が距離を詰めることや、出馬へのハードルを低くするという、意識の変革が急務だろう。

 首長や議員には、有権者との距離を詰める努力を求めたい。浦幌町では議会改革で住民との接点を増やす取り組みを続け、今回26歳をはじめ20、30代の新人候補3人が当選した。自らの活動報告を定期的に紙やSNSで通信として発行したり、意見交換の場を設けたりするなど、仕事の「見える化」で選択肢を与えることが可能になる。

定数、報酬論議を
 議会では定数と報酬の関係を見直すことも、有権者の関心を向ける方法の一つ。例えば、任期中、報酬引き上げとセットで第三者機関が活動を評価し、住民に公表する仕組みをつくるなどの試行錯誤を重ね、改革に取り組んでほしい。

 清水町や芽室町で実践する「自分ごと化会議」も参考になる手法ではないか。自治体の課題を無作為で選ばれた住民が論議することで行政に関心が向き、成功体験は政治参加の意識醸成につながる。他地域ではそこから議員を目指す人も出ているという。公職選挙法との兼ね合い次第だが、士幌町の移動式期日前投票所のように、各高校に期日前投票所を設けるのも、若者の政治参加へ向けた試みとして面白い。

 統一地方選は終わったが、首長や議員と有権者との付き合いは当選がゴールではない。選挙は民主主義の根幹。4年後に向け、議員定数や報酬の論議、有権者との距離の詰め方、選挙に出やすい環境づくりの試行など、私たち地域メディアも含め、それぞれの責任で、政治を身近なものにしていく不断の努力が必要だ。(政経部長・植木康則)

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