加工用乳価10円引き上げ ホクレン 乳製品向け上げ幅は過去最大
【札幌】ホクレンは22日、乳業メーカーに販売する2023年度の生乳価格(乳価)に関し、バターやチーズ、脱脂粉乳など乳製品向け乳価を22年度比で1キロ当たり一律10円値上げすることで、大手・中堅乳業メーカー15社と合意したと発表した。適用は23年4月1日取引分から。乳製品向けとしての上げ幅は過去最大。(安藤有紀、道下恵次)
穀物の国際相場の高騰や円安の影響を受け、配合飼料価格をはじめとする生産コストが上昇し、酪農経営の収支が著しく悪化。生産現場から価格改定を求める声が上がっていた。
飲用向け乳価は、既に今年11月に1キロ当たり10円の期中値上げを実施。23年度はその水準を据え置く。
乳製品向けの引き上げ率は11~13%。道内で生産される生乳のうち8割が乳製品加工用であることから、農家の平均乳価(プール乳価)は、1キロ当たり9円程度の引き上げとなる見通し。
ホクレンは「(11月の値上げだけでは)コスト上昇を補える水準ではない」とし、さらに子牛価格の暴落で酪農経営が一層悪化していることを挙げ「このままでは離農が加速し、生産基盤の弱体化を招く恐れがある。一刻も早い乳製品向け乳価の改定を要請してきた」(生乳共販課)とした。乳製品向けについても期中改定を目指していたものの、学校給食の需要が減少する時期であることを懸念する声が多かったという。
一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響で消費が低迷、脱脂粉乳の在庫は過去最大となっている。道内では今年度から生産抑制に取り組んでおり、北海道農協畜産酪農対策本部委員会は11月、23年度の道内の生乳目標数量を今年度より約9万トン(2・2%)減の401万9000トンとすることを決定した。
ホクレンの篠原末治会長は定例会見で乳価引き上げについて「各種資材が高騰するなど厳しい経営環境の中、経営の窮状に最大限の理解をいただき、大きな決断をいただいたと考える」と述べた。
ただ、ホクレンは依然として脱脂粉乳在庫があり、23年度も大きな需給ギャップが見込まれる状況を説明。「生乳販売対策などにより着実な生乳需要の確保、需給改善に取り組み、生産基盤の維持確保を図っていく」としている。