潜水調査船の斧寄贈 中川一郎氏が所有 遺族が海洋機構に
【神奈川】故中川一郎元農水相が科学技術庁長官時代に、有人潜水調査船「しんかい2000」の進水式で使った支綱(しこう)切断用の斧(おの)が16日、海洋研究開発機構に寄贈された。
寄贈したのは、一郎氏の次男で札幌在住の会社役員中川英二さん(65)。一郎氏の妻貞子さんが昨年10月に死去し、都内の自宅を整理する過程で見つかった。ふさわしい場所で活用してもらおうと、「しんかい」を所有・運用していた同機構に贈った。
水深2000メートルまで潜航できる「しんかい」は、日本初の大深度有人潜水調査船。1981年に完成、同年1月21日に三菱重工神戸造船所で進水式が行われた。2004年に退役したが、その後の海洋調査機器の開発・運用の礎を築いた。現在は新江ノ島水族館(神奈川藤沢市)で展示されている。
斧は、進水式で船につながる綱を断ち切るために使われた物で、一郎氏がその大役を担った。また貞子さんの自宅からは、「しんかい」の支援母船「なつしま」の支綱(しこう)切断斧も見つかり、合わせて同機構に寄贈した。なつしまの進水式は、1980年8月21日に川崎重工神戸工場で開かれた。いずれの斧も全長約30センチで、「国務大臣科学技術庁長官中川一郎」の刻印が施されている。
この日は英二さんが神奈川県横須賀市の同機構本部を訪れ、大和裕幸理事長に斧を手渡した。大和理事長(68)は「日本の科学技術を支えてきたモニュメントを残すことは重要。歴史や情熱が伝わる」と感謝した。二つの斧は同機構で一般向けに展示する予定。
英二さんは「父は農業だけではなく、科学技術分野でも日本の発展のために尽力したことを多くの人に知ってほしい」と話した。(池谷智仁)