西帯広の地域医療支え25年 いしだ内科・循環器科が30日に閉院
帯広市内のいしだ内科・循環器科(西24南3、石田宏之理事長)が、30日で閉院する。開院から25年。患者の日常的な健康問題に対応し、現在の総合診療科としての役割も担うなど、地域住民の健康を見詰めてきた。65歳を医師としての一つの引き際と考えていた石田理事長(66)は、「勤務医では体験できないことをさせていただいた。皆さまに感謝したい」と話す。
石田理事長は幕別町出身。幕別小、幕別中、帯広柏葉高、札幌医大卒。アメリカ留学、留萌市立病院や帯広協会病院勤務を経て、1997年2月に開業した。
西帯広地域が新興住宅地として発展する中、当時は医療機関が少なかった。そのため、「患者さんが途切れなかった」と振り返る。
専門は循環器内科だが、開業後は「(内科以外の)さまざまな症状を訴える患者さんも訪れた」。医院の2階が自宅となるため、「時間や曜日に関係なく、急患も来院した」。慌ただしい日々を送る中でも、町医者として患者と対等な関係を築くことに心を砕いた。
「勤務医やサラリーマンは65歳で定年。自分も同じ時期に…」。5年ほど前から引き際を考えていたという。年齢を重ねるたびに、ミスが許されない毎日の診療の対応が「肉体的に厳しくなってきた」とも話す。
石田理事長は現在も紙カルテを用いる。患者との対話を第一に、顔色や声色、しぐさなど、一人一人の特徴を記入すると同時に、自らの“頭のメモ”にもとどめた。「昔は記憶力がしっかりしていたが、この1、2年は厳しかったね」。年を重ね、患者に迷惑を掛けまいと閉院を決断した。
閉院が近づくにつれ、患者から「まだ続けて」との声が多く寄せられる。ふるさと十勝の地域医療に携われたことに感謝の言葉も述べながら、「区切りを付ける時が来ただけ」と、自らの決断に理解も求める。
新型コロナウイルスの感染拡大など、開業時とは医療の環境は異なっている。「いまは、病院と医院・クリニックの機能がしっかりと分かれている。病状や症状に応じて受診していただくことが、地域の医療を守る形になる」とも話す。(松岡秀宜)