パシュート銀メダル 十勝からたたえる声
【幕別・中札内】北京五輪のスピードスケート女子団体追い抜き(チームパシュート)の準決勝、決勝が行われた15日午後、高木菜那・美帆選手の出身地幕別町と、押切美沙紀選手の出身地中札内村で観戦会が開かれ、全力で戦い抜いた結果の銀メダルに温かい声が寄せられた。
幕別町百年記念ホールでは、オンラインを交えた応援会が開かれた。会場では飯田晴義町長や町内スポーツ団体関係者ら約20人が観戦。オンライン上では押切選手の出身地中札内村の森田匡彦村長、佐藤綾乃選手の出身地釧路管内厚岸町の若狹靖町長ら約90人が声援を送った。
決勝戦、日本リードの展開に会場の関係者はスティックバルーンをたたいて応援。最終コーナーで高木菜那選手が転倒すると「あぁ」とため息が漏れたが、力を振り絞った日本チームに大きな拍手が送られた。飯田町長は「菜那さんが悲しみにくれているが、全力を出した結果だと思う。全力を出し切ってくれたことがうれしい」とたたえた。
応援会は町内有志による「北京2022オリンピック出場選手を応援する会」が企画した。(本田龍之介)
「悔しさ百倍で返して」 姉妹の恩師・東出さん
帯広南商業高校スピードスケート部元監督で、高木姉妹を高校時代に指導した東出俊一さん(65)=帯広大谷高社会科講師=も幕別の応援会場で声援を送った。
最終コーナーでの菜那選手の転倒に「菜那は練習、大会を含め、転ぶこと自体がとても珍しい。疲労でバランスを崩したのではないか」と分析。「カナダの追い込みで足を使ってバテていたのでは。スポーツだからこういうことはある。健闘を心からたたえたい」と語った。
東出さんは観戦後、高校時代の菜那選手がなかなか1位をとれなかった時期を思い返していた。菜那選手が敗戦後に「なんで勝てないのか」と泣いていた際、東出さんは「環境のせいじゃない。自分自身が弱いからなんだ」とあえて厳しい言葉を掛けた。成長につながると信じていたからだ。
そんな東出さんも今回の大舞台での転倒には、「今もし菜那が目の前にいたとしても、高校の時のように声は掛けられない。『しょうがない』と言うしかないですよ」と語った。菜那選手は19日のマススタートに出場する。「きっと気持ちを切り替えられるはず。悔しい気持ちを何百倍にもして返してほしい」と恩師は十勝から願っている。
(本田龍之介)
「次の種目期待」 高木姉妹と親交 札内神社岩崎宮司
高木姉妹が過去に巫女(みこ)として手伝い、毎年のおはらいや初詣などで親交が深い札内神社(幕別町札内)の岩崎寿宣宮司(57)は「金には届かなかったが、姉妹で2大会連続のメダルを取ること自体がすごい。胸を張って帰ってきてほしい。それぞれの次の種目も期待している」。社務所には五輪でメダルを取るたびに張り紙を掲げ、「この銀メダルを祝う張り紙も早速作って飾りたい」と話していた。
帯広スケート連盟の細川吉博会長(63)は「銀メダルだったが、息の合った素晴らしい走りだった。十勝でスケートを頑張る子たちの励みになる」とたたえ、「高木姉妹はまだ競技が残っている。もう二つメダルを獲得して」と期待した。(松村智裕、小野寺俊之介)
押切の古里も涙 中札内
【中札内】文化創造センター・ハーモニーホールで開かれた押切選手を「応援する会」(石澤健二会長)による観戦会には、村民限定で約70人が集まった。押切選手は出場しなかったが、高木菜那・美帆、佐藤綾乃の3選手に声援を送った。よもやの結末に場内は悲鳴に包まれたが、小学校時代からライバルで良き友だった菜那選手を抱きしめる押切選手らの映像が流れると、涙を拭う来場者の姿が見られた。
押切選手の父敏則さん(58)は「残念な結果だが、銀メダルだから。(娘が)決勝に出られなかったのは残念だけど、自分のやるべきことはやったんだと思う。5000メートルで自己新記録での入賞、褒めてあげたい」と話し、母春美さん(55)は「(娘には)『お疲れさま』と言いたい。胸を張って帰ってきてほしい」とねぎらった。
森田匡彦村長は「押切選手は十勝の人に勇気と元気を与えてくれた。村民の誇りに思う」とたたえた。
(吉良敦)