高木美帆「北京で勝ちにいく滑りを」 スピードスケートナショナルチーム練習公開
【長野】スピードスケートのナショナルチーム(NT)が14日、長野県上田市の菅平高原で合宿中の練習を公開した。幕別町出身の高木菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)、美帆(日体大職-日体大、同高出)姉妹らが、来年2月の北京冬季五輪を見据えて、陸上トレーニングに励んだ。体重移動やフォームの確認を行うスライドボードでは、高木姉妹と押切美沙紀(富士急-駒大苫小牧高、中札内中出)らオールラウンダー陣は8分間を4セット行った。村上右磨(高堂建設)や郷亜里砂(イヨテツ-山梨学院大、白樺学園高出)らの短距離勢は2分間、山田将矢(日本電産サンキョー-日大、池田高出)らの中距離陣は3分間のトレーニングを、正面に置かれた鏡を見ながら姿勢などをチェックしていた。自転車のメニューにも熱心に取り組んでいた。(北雅貴、塩原真)
菅平高原は標高1300メートルから1600メートルと高地にあり、平地より酸素が薄い。NTは心肺機能の強化などを目的に、平昌五輪の前年の2017年から同地で合宿を定期的に実施している。今回は2日から24日までと従来より長い期間に。ヨハン・デビットヘッドコーチ(オランダ)は「よりハードなトレーニングができることと、高地への慣れの二つの目的がある」とする。
北京五輪での日本の出場枠数に影響のあるワールドカップ前半戦で予定されている、高地のソルトレークシティー(米国)とカルガリー(カナダ)を見越したもの。ヨハンヘッドコーチは「現在は、選手のコンディションも雰囲気も非常に良い」と話した。
菅平合宿の後は帯広に移動し、10月6日まで明治北海道十勝オーバルで練習を重ね、国内主要大会の開幕戦となる全日本距離別選手権(同22~24日、長野市のエムウェーブ)に臨む。
「次は自分たちの番」練習の質高める 高木美
「東京オリンピックが終わって周りの空気が冬にシフトチェンジした感覚があり、気が引き締まった。きれいな滑りではなく、勝ちに行けるように取り組んでいく。一番のキーポイントはメンタル」。高木美帆は現段階では、五輪だけに焦点を合わせる段階ではないと前置きした上で、5カ月後に迫った大舞台への意欲を語った。
前回の2018年平昌五輪では、団体追い抜き(チームパシュート)で金メダル、1500メートルで銀、1000メートルで銅と三つのメダルを獲得。北京ではパシュートの連覇と個人種目での金メダルの期待も懸かる。けがなどもあった昨年の同時期と比べ、「通常通り、体に特に不安を感じることなくトレーニングできている。一つひとつの練習の中身の質を上げていくことに集中している」。
コロナ禍での東京五輪はテレビで観戦した。選手の笑顔や歓喜の場面を見て元気や勇気をもらい、スポーツの力を感じた。開催について賛否のいろいろな意見があるのも理解している。1500メートルの世界記録保持者は「複雑な気持ちもあり表現が難しいが、次は自分たちの番かなと。しっかりやっていきたいと思った」と力を込めた。
成長実感「満点の滑り目指す」 高木菜
平昌五輪マススタート金メダルの高木菜那も、北京五輪へ気持ちが高まっている。「東京五輪でたくさんの刺激を受けた。北京へ良いスタートを切れるようにしていく」と力強く話した。
近年苦しめられていた膝の不安が減った昨季は、個人種目でも飛躍。今年は菅平に来る前の帯広での1カ月近い氷上練習で「昨季と比べてまた違う手応えやフィーリングが更新されている」とさらなる成長を実感している。
東京五輪では男子マラソンで6位に入賞した大迫傑(ナイキ)に感銘を受けた。「レース後に自分の走りが100点満点と言っていた。これまでの積み重ねや努力を一つのレースで全部出せたというのはすごい。私も最高の舞台で100点満点の滑りをしたい」と目を輝かせた。
菅平では陸上トレーニングの最後の追い込み時期と捉えている。「一本一本集中してやっている」としつつも、「スケートが速くならないと意味がない」と表情を引き締めた。
全身を使った滑り意識 村上
男子500メートルで34秒44の国内最高記録を持つ村上右磨は、7月上旬の網走合宿では腰に違和感を覚えていたが、現在は手応えを感じている。
スタートダッシュなど前半のスピードには定評がある。「最後の200メートルが自分の課題。オリンピックで金メダルや、メダルを取る最後の決め手となる」。昨季から強化しており、今年も継続中だ。
滑りでのパワーを出すために太ももや背筋に頼っていたが、全身を使えるように意識。骨盤の安定性にもつながってきている。
「課題克服や目標に着実に近づいている」と自信を見せた。
一番良い準備できている 山田
初の五輪出場を狙う25歳の山田将矢。「平昌五輪を見て、自分もオリンピックを目指したいと思ってやってきた。この4年間で一番良い準備ができている」と静かに話した。
3季前に大躍進を果たし、国内、世界でもトップクラスの選手に。それでも「世界でそこまでマークされている選手ではない」と謙虚だ。平昌五輪後にNT入り。筋肉量が増え、着実にパワーアップしている。「(全日本)距離別選手権で世界にアピールできるタイムを出したい」と意気込んだ。
挑戦する気持ち 押切美沙紀の話
復帰して2シーズン目。挑戦する気持ちを忘れず、スケートを楽しみながら取り組んでいる。この夏は技術面を重視してきた。個人の力を高めることでパシュートのチームの力になれれば。
メダル狙う 郷亜里砂の話
けがもなく順調。課題のスタートも陸上トレーニングから意識してきて、少しずつ理想に近づいている。がむしゃらに練習していた4年前より気持ちに余裕はある。北京でメダルを狙う。
積極的に体づくり 稲川くるみ(大東大-帯三条高出)の話
体力面が課題なので、今年は積極的に体づくりに励み、技術面でも新濱(立也、高崎健大職)さんや村上(右磨)さんを見て試行錯誤している。コーナーを速くしたい。
強い気持ちで戦う 辻麻希(開西病院)の話
昨季は道具などいろいろと試したが思うような結果を残せず、課題が明確になったシーズンだった。(12月末の)代表選考会は北京に行く強い気持ちで戦う。悔いのない滑りができれば。
何としても五輪つかむ 松井大和(シリウス-日大、鹿追高出)の話
何としても五輪に出たい。国内での代表争いも激しいので、一つでも上の順位を目指す。まずはワールドカップに出るなど、着実に一つひとつやっていく。わくわくしている。
<日本スケート連盟2021年度強化選手>
【男子】
▽ナショナル=村上右磨(高堂建設)新濱立也(高崎健大職)松井大和(シリウス-日大、鹿追高出)森重航(専大)倉坪克拓(日大)小田卓朗(水戸開研)山田将矢(日本電産サンキョー-日大、池田高出)三輪準也(フィットラボ-法大、白樺学園高出)野々村太陽(専大-白樺学園高出)一戸誠太郎(ANA)ウイリアムソン師円(日本電産サンキョー)土屋陸(同)土屋良輔(メモリード)伊藤貴裕(日本電産サンキョー)大林昌仁(福井県スポーツ協会)蟻戸一永(専大-白樺学園高出)
▽シニアA=近藤太郎(ANAAS)
▽同B=森本拓也(三重県スポーツ協会-日体大、池田高出)羽賀亮平(RECAREスポーツ-日大、白樺学園高出)藤野裕人(ジョイフィット)小島良太(エムウェーブ)
▽ディベロップメント=堀川翼(専大-白樺学園高出)山田和哉(高崎健大-池田高出)山本大史(栃木県スポーツ協会)小川拓朗(同-白樺学園高出)
▽ジュニアA=土屋慶介(高崎健大)時安清貴(帯三条高)井出雄斗(小海高)松本一成(高崎健大)橋本芳彦(法大)
▽同B=高見沢匠冴(小海高)三井晃太(専大)谷垣優斗(専大-白樺学園高出)阿部心哉(帯三条高)菊池健太(専大-白樺学園高出)齊藤幸哉(日大-帯三条高出)笠原光太朗(帯三条高)佐々木翔夢(小海高)武田京乃(池田高)
▽ノービス=長崎向葉(ベクトル)宮本哲朗(コニファー)増山慶成(ベクトル)
【女子】
▽ナショナル=郷亜里砂(イヨテツスピードクラブ-山梨学院大、白樺学園高出)辻麻希(開西病院)稲川くるみ(大東大-帯三条高出)曽我こなみ(日本ハウスH&R)高木美帆(日体大職-日体大、帯南商高出)高木菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)佐藤綾乃(ANA)押切美沙紀(富士急-駒大苫小牧高、中札内中出)
▽シニア特別=小平奈緒(相澤病院)
▽同A=山田梨央(直富商事)
▽同B=熊谷萌(山梨学院大)
▽ディベロップメント=小野寺優奈(富士急-高崎健大、帯南商高出)ウイリアムソン・レミ(大東大)小坂凛(三重県スポーツ協会)酒井寧子(富士急-高崎健大、帯南商高出)堀川桃香(白樺学園高)
▽エリートアカデミー=飯田明音(星槎国際高)
▽ジュニアA=吉田雪乃(寿広)宮川鈴佳(日体大)北原伊織(岡谷東高)水戸咲良(帯三条高)森野こころ(駒大苫小牧高)
▽同B=野明花菜(岡谷南高)犬塚莉帆(秀明英光高)福岡歩里(大東大)真野美咲(山形中央高-中札内中出)
▽ノービス=野々村凜音(OSSC)伊藤未来(恵南Jr.)
◆2021-22年シーズン主な大会
<国内大会>
◇10月
▽第28回全日本距離別選手権大会(22~24日・長野市、エムウェーブ)
◇11月
▽全日本選抜競技会帯広大会(19~21日・明治北海道十勝オーバル)
▽第41回全日本学生選手権大会(27、28日・群馬県渋川市、群馬県総合スポーツセンター伊香保リンク)
◇12月
▽全日本選抜競技会盛岡大会(3~5日・岩手県盛岡市、岩手県営スケート場)
▽JOCジュニアオリンピックカップ大会第45回全日本ジュニア選手権大会(10~12日・釧路市、釧路市柳町スピードスケート場)
▽全日本選抜競技会恵那大会(17~19日・岐阜県恵那市、岐阜県クリスタルパーク恵那スケート場)
▽北京オリンピック日本代表選手選考競技会(27~30日、エムウェーブ)
◇22年1月
▽第94回日本学生氷上競技選手権大会(5~7日・明治北海道十勝オーバル)
▽第22回全日本マスターズ競技会(8、9日・福島県郡山市、磐梯熱海スポーツパーク郡山スケート場)
▽第71回全国高校スケート選手権大会(17~21日・青森県八戸市、YSアリーナ八戸)
▽全日本ノービス競技会富士吉田大会(22、23日・山梨県富士吉田市、富士急ハイランドコニファーフォレストセイコオーバル)
▽第77回国体冬季大会スケート競技会(25~28日・栃木県日光市、日光市霧降スケートセンター)
▽第42回全国中学校スケート大会(29日~2月1日・エムウェーブ)
◇2月
▽全日本選抜競技会渋川伊香保大会(4~6日・群馬県総合スポーツセンター伊香保リンク)
▽全日本ノービス競技会札幌大会(12、13日・札幌市、真駒内セキスイハイムスタジアム)
▽第12回全国高校選抜競技会(19、20日・明治北海道十勝オーバル)
▽第89回全日本選手権大会(26、27日・YSアリーナ八戸)
<国際大会>
◇11月
▽ワールドカップ(W杯)トマショフマゾウィエツキ大会(12~14日・ポーランド)
▽W杯スタヴァンゲル大会(19~21日・ノルウェー)
▽ジュニアW杯インツェル大会(27、28日・ドイツ)
◇12月
▽W杯ソルトレークシティー大会(3~5日・アメリカ)
▽W杯カルガリー大会(10~12日・カナダ)
◇22年1月
▽ジュニアW杯インスブルック大会(22、23日・オーストリア)
▽ISU四大陸選手権大会(28~30日・明治北海道十勝オーバル)
◇2月
▽第24回オリンピック冬季競技大会(4~20日・中国北京)
◇3月
▽世界大学選手権大会(2~5日・アメリカ)
▽ISU世界選手権大会(3~6日・ノルウェー)
▽W杯ファイナル(12、13日・オランダ)