コロナ禍の救急隊員が奮闘、感染源にならないために きょう救急の日
救急患者への応急処置を施し、いち早く医療機関へ搬送する消防署の救急隊員。新型コロナウイルスの流行下で感染者を運ぶこともあり、患者と隊員の安全を両立しながらの活動が求められている。長引くコロナ禍でも「救命のリレー」を確実につなぐため、現場では細心の注意を払いながら救急活動に当たっている。9月9日は「救急の日」。(石川彩乃)
とかち広域消防局は昨年から、全ての救急活動で、救急隊員のゴーグルなどの防護具やマスク、感染防止衣(ガウン)の着用を強化した「標準予防策」を講じている。また、今年に入り帯広、芽室、本別の各消防署に搬送患者と隊員らを隔離する装置「アイソレーター」を計8台導入した。
救急現場では、コロナ感染者や疑いのある患者を搬送することがある。日頃の感染対策は徹底しているが、同局は「大切なのは隊員が他の患者や隊員への感染源にならないこと」と強調。夏場の厳しい暑さの中でも、ガウンやマスク、ゴーグルなどは欠かさない。
一度の救急活動で現場に向かうのは約3人。コロナ以前は、搬送後の救急車の消毒作業を5~6人で行っていたが、現在は二次感染防止のため、現場に出動した隊員のみで行うことも。コロナ禍では消毒場所も増やし、1時間かけて念入りに作業することもある。
今春まで帯広消防署で救急搬送に携わり、現在は救急企画課で現場を後方支援する救急救命士の藤山純主査(41)は、「コロナだから特別ということはなく、救急活動はすべてが特別な状況」と語る。しかし、コロナの収束が見通せない中で、救急隊員は感染症流行のたびに「自分が感染するのでは」と不安感と隣り合わせだと打ち明ける。
札幌や東京などの首都圏では、医療逼迫(ひっぱく)で患者を医療機関に運べないケースも相次いでいる。同局によると、管内で救急搬送が困難となった事例は確認されていない。ただ、医療機関が近くにない地域の場合、急変した場合にすぐに対応できず、最悪の事態も懸念されることから、同局は住民に対し救急車の適正利用を呼び掛けている。藤山さんは「特定の人が気を付けるのではなく、誰もが必要な感染対策をし、コロナの収束に向かっていけたら」と前を見据えている。