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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「帯広・満寿屋商店」

杉山雅則社長

1.農家出身の祖父 身近な食材使う
 創業は1950年、杉山雅則社長(45)の祖父で創業者の杉山健一さんが農家だったこともあり、パンの原材料となる農産物が身近にあった。最初の店舗からなるべく砂糖や小豆、卵、牛乳などを地元の生産者から仕入れ、それらを使ったパンを農家の人たちを中心に多くの客に買ってもらっていた。

 帯広市の「まちなか」にあった1号店は移転して、現在の本店(西1南10)の場所へ。周辺にはカレーライスチェーンのインデアンなど地元の人たちに愛される店が集まっており、この界隈はにぎわった。2代目の健治さんの時代には、来店が1日に2500人と人気を集め、87年に2号店「ボヌールマスヤ」(西17南3)をオープンする。

 現在の店舗は6軒。帯広市の住宅開発が当初西部へ広がり、その後市郊外や南部が発展するのに歩調を合わせるように数を増やしてきた。

2.道産小麦から十勝産100%へ
 杉山雅則社長によると、健治さんが客からある日、「小麦は十勝産が使われているのか」と尋ねられ、初めて主原料はどこから来ているのかと調べた。すると小麦はほぼ100%外国産だった。

 十勝は小麦の広大な畑が広がり、生産量が日本一。地元産を使おうとかじを切ったのは89年だった。パンに適した小麦として、まず北海道産の春まき小麦「はるゆたか」が石狩管内で栽培されていたが、十勝ではまだ栽培農家がなく、地元の若手の農家に協力してもらい普及を試みた。

 だが、気候要件や不作リスクが立ちはだかり、なかなか栽培は難しかったという。その後品種改良が進み、病気に強い「春よ恋」「キタノカオリ」が普及。十勝産小麦100%のパンは2000年代半ばには実現が近づいていた。

 雅則社長は大学、米国留学、社会人を経て04年に10年ぶりに十勝へ戻ってくると、この土地の価値を強く感じた。母・輝子さん(現会長)から経営のバトンを引き継ぎ、地元の良さを広める一環で食育活動を05年から、「十勝産小麦100%」と合わせて推進した。手作りの石窯を積んだ軽トラック「石窯号」で、幼稚園や小学校、町のイベントなどを訪れ、焼きたてのパンやピザをふるまった。

 道産小麦をうたっても手応えが薄かったが、12年に全店全種類100%十勝産小麦を達成。客足、売り上げはそれまでより3割伸長した。

3.農家と交流増え経営多面的に学ぶ
 同友会に加入したのは2011年。数多くの農家との交流が増えた。さまざまな勉強会への参加やイベントで一緒に活動することが、経営を多面的に学ぶ貴重な機会になっている。

 企業目標は、「お客様と農家さんと私たちが笑顔と喜びに満ちあふれる小麦王国十勝のパン屋」。何年までの売り上げ目標など全体数値をあえて持たず、農産物を加工して、いかに価値を高めて客に買ってもらうかを常に考えている。

4.「2030年 十勝がパン王国になる」
 100%十勝産小麦の目標を視界にとらえていた2010年、満寿屋商店は「2030年 十勝がパン王国になる」と新たなビジョンを掲げ、「5」という数字にまつわる4つの目標を示した。

 最初の「5」は、年商5億円の店舗を一つ作ること。「50」は、十勝でパンブームを巻き起こし、地域の一人一日当たりのパン消費支出額を50円にすること。杉山社長によると、この額は全国平均でいま30円水準という。拡大には観光需要を含めて全体を伸ばす。

 3つ目の数字「500」は、十勝にパンを学べる場を作り、海外からの留学生だけで延べ500人を集めること。最後の「50000」は、十勝産のパン用小麦の年産量を5万トンに引き上げること。正確な統計はないが、杉山社長によると、現在の推計は2万~3万トンという。

 このビジョンに向かう過程の2025年、日本最大の敷地面積を誇るパン店「麦音」は、隣接地2ヘクタールを使って拡張開業する計画だ。コンセプトは「日本で最初の地産地消のパンのテーマパーク」。そこでは「パンを買って食べる」から、多彩な食べ方を提案し、パンの作り方を習い、多くの体験ができる施設にする。拡張部分は一般の電力供給がほとんどなくても自然の恵みからパンを焼く「自然ベーカリー」として運営する構想だ。


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