隻腕の釣り師、59センチのニジマスゲット! 音更の野中さん
【音更】不慮の事故で左前腕を失い「隻腕のアングラー」として活動する町木野大通東17の会社員野中公人さん(40)が19日、1級河川の十勝川水系で59センチの大物ニジマスを釣り上げた。野中さんは右腕一本でルアーフィッシングをする動画をユーチューブで公開しており、身体的なハンディキャップを隠さずに釣りの楽しさを広く伝えている。
野中さんは26歳の時に左腕の肘から先を失った。自暴自棄になり、大好きな釣りも嫌になった。ロッド(さお)を振るにも、リールを巻くにも、魚を取り込むにも右腕だけでは難しかった。さらに屋外に出掛けると、人目が気になった。
野中さんは、次第に人目を避けるようになり、釣りにも出掛けなくなってしまった。しかし「家族や釣り仲間の励ましもあって、気持ちが前向きになれた」という。その後は積極的に隻腕であることを公表するようになり、2017年5月には、釣り仲間とインスタグラムで釣果を紹介し始めた。
釣りは、小学1年生の時に父親に連れられて行き大好きになった。社会人になっても趣味として河川、湖、海へ釣りに出掛けたが、不慮の事故で釣りライフは一変した。
ロッドは、振りやすさを考えて7フィート(約2・1メートル)の軽くて短いものにした。餌は生き餌ではないルアー中心に。リールはハンドルの持ち手部分を球状のものに付け替え、左上腕の先端に100円ショップで購入した直径3・5センチの計量スプーンを乗せ、ハンドルの持ち手部分をスプーンに入れて押さえながら巻き上げるスタイルを確立した。
19日は釣り仲間と2人で出掛けた。午前10時半ごろ「最初は根掛かりかと思った」が、すぐに強烈な引きがあり約6分間の格闘の末に取り込んだ。自分史上最大のニジマスに「すごく感動した」と振り返り、満面に笑みを浮かべた。
今春からは釣り仲間と一緒に「ワンチキ釣りだべさ」のチャンネル名で、ユーチューブに釣り動画をアップしている。今後は80センチオーバーのイトウ、さらに知床でカラフトマスの大物にも挑戦したいという。野中さんは「釣りの楽しさを、自分も楽しみながら広く伝えていきたい」と張り切っている。(内形勝也)