芽室の小寺さんが写真絵本を出版 札幌の児童文学作家と制作
【芽室】町在住の写真家小寺卓矢さんが、札幌の児童文学作家の升井純子さんと写真絵本「さくららら」を制作し、アリス館から全国出版された。チシマザクラの木を主人公としたストーリー。モデルとなるサクラの木探しから完成まで7年間を費やした。升井さんと小寺さんは「難産だったからこそすごく良い本になった。北国にいる2人だからこそ作れたもの」と話した。
この絵本は、升井さんが上川管内幌加内町朱鞠内の桜の開花を知らせる新聞記事を目にしたことが始まり。5月下旬の開花に「ようやく」と表現されていたことに違和感を持ち、「花開く時期に決まりがあるのか」と物語が膨らんだ。絵よりも説得力のある写真を合わせたいと考え、北海道子どもの本連絡会の会員同士である小寺さんに声を掛けた。
面識はなかったが、小寺さんは、「自然写真を撮って20年以上になるが、自然の物事を人間の尺度だけで測ることに、前から違和感があった」と原案に共感。被写体となるチシマザクラの木を探し、町北伏古にシチュエーションがぴったりの木を見つけた。しかし、1年間追い続けて春を迎えたが、満開にはならなかった。
改めてモデルとなる木を探す中で、原点である朱鞠内のサクラを19年5月の開花時期に見たところ、2人のイメージに一致。20年5月まで10回ほど訪れ、サクラの木とその周囲の動植物を撮影した。
「大変だったがなんとかなるとは思っていた」と小寺さん。「青空や雲の流れなど奇跡の積み重ねで被写体からご褒美をもらった」と振り返る。絵本の中で「わたしがさく日は わたしがきめる」とメッセージを込めた升井さんは「子どもに限らず大人にも読んでもらいたい。『いつかあなたが咲く日が来るよ』と受け取ってもらえたらうれしい」と話している。
1400円(税別)。全国の書店やインターネットショップで扱っている。(細谷敦生)