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父の木彫り、息子2人が受け継ぐ がんで亡くなった山本さん「家族のお守りに」

山本さんの作品と遺影を前に、「父が大切にしていた思いを引き継ぎたい」と話す宗志さん(左)と大悟さん

 末期がんを宣告されてから趣味の木彫りに情熱を注いだ帯広市の男性が先月、61歳で亡くなった。山本教章(のりあき)さん。家族のお守りにしようと、一本の丸太から、神仏を題材にした作品を制作途中だった。「父さんは僕たちの一部」。父の死後、2人の息子が作品作りを引き継ぐ。

 市内の建設資材業「北海林友」に勤務していた山本さんは2016年11月、ステージ4の肺がんを宣告された。今年から緩和ケアに移り、自宅療養していたが、10月16日に亡くなった。

 妻のひとみさん(54)によると、山本さんが木彫りを始めたのは、30歳目前。小さな丸太と彫刻刀で「観音像」を彫り上げた。長女亜美さん(32)を妊娠した頃で、「仏教に関心があると聞いたことはなかったが、頭の中で彫りたいものが見えたと言って、急に彫り始めた」と振り返る。

 5年以上たってから2作目に取り掛かり、七福神の一柱「大黒天」が完成。作品はこの二つだけで、約20年間制作から離れていた。

山本さんが初めて手掛けた観音像

 再び木彫りに情熱を注ぎ始めたのは、がんの宣告を受けてから。ひとみさんは「夫は作り手の魂が作品に宿ると信じていた。家族のお守りになるからと、彫ることが使命になっていったのだと思う」と話す。

 「目に見えない力」を持つ神仏について理解を深めるため、「借金をしてでも見て回ろう」と、ひとみさんを誘って全国50以上の寺社仏閣を訪ねた。そして竜や白蛇、弥勒(みろく)像を彫り始めた。

 やがて座って作業する体力も無くなり、横になって取り組むようになった。体調が回復すればカフェを開き、木彫りを無料で教える夢を語るようにもなった。

 「一緒に彫らないか」。職人かたぎで、一人で黙々と打ち込んできた山本さんが家族にそう声を掛けたのは、今年6月ごろ。長男宗志さん(33)と次男大悟さん(28)がその思いに応えた。

 「無口の父が、教えている時はよくしゃべり、表情が違った」と宗志さん。父が果たせなかった直径40センチ、高さ70センチの丸太から「大日如来像」を彫り上げるつもりだ。古い史書に登場する「十種神宝(とくさのかんだから)」は次女芽衣さん(30)も含めた家族全員が少しずつ手を入れ、大悟さんが中心となり制作を進める。

 宗志さんと大悟さんは「父さんが家族のために残そうとした作品を完成させ、僕たちの子どもや孫にも伝えていきたい」と話している。(高田晃太郎)

関連写真

  • 大悟さんが中心となって制作を進める十種神宝

    大悟さんが中心となって制作を進める十種神宝

  • 一本の丸太から彫り上げた竜と白蛇。この作品を作り始めた直後に、がんが発覚した

    一本の丸太から彫り上げた竜と白蛇。この作品を作り始めた直後に、がんが発覚した

  • 一本の丸太から彫り上げた竜。この作品を作り始めた直後に、がんが発覚した

    一本の丸太から彫り上げた竜。この作品を作り始めた直後に、がんが発覚した

  • 大悟さんが中心となって制作を進める十種神宝

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  • 神前に置かれた観音像と大黒天

    神前に置かれた観音像と大黒天

  • 2作目となる大黒天

    2作目となる大黒天

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