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79歳 約束の雌阿寒登頂 11歳で他界 千綴さんの手紙持ち 足寄の清水さん

雌阿寒岳の頂上で記念撮影する清水さん(後列右)と千綴さんのきょうだいら。後列中央は泉さん。

「一緒に登りたかった」
 【足寄】足寄町上利別の畜産業清水敏彦さん(79)は20日、2年前に急性骨髄性白血病で11歳で亡くなった釧路市の高橋千綴(ちづる)さんと交わした「一緒に登る」という約束を果たすため、千綴さんのきょうだいらと雌阿寒岳に登った。今年4月、心臓の弁を移植する大手術を受けた清水さん。「千綴ちゃんと一緒に登りたかった。でも、千綴ちゃんの姉や兄、妹、弟と登れて役割を果たしたかな」と話し、亡き少女をしのんだ。

励まし、今は励まされ
 千綴さんは2016年に発病した。釧路ジュニアオーケストラでチェロを弾いていた。病魔と闘いながら「音楽で人と人をつなぎ、笑顔を広げたい」と、好きな音楽のCDを小学校に贈るなどの活動をしていた。18年、音更町の伊福部昭記念ジュニアオーケストラ(泉大樹団長)と知り合い、両ジュニアオーケストラは合同演奏をするなど絆を強めた。

 団長の泉さんは獣医で、同年2月、普段は管轄外の足寄町の、清水さんの牧場を診療業務の応援で訪れた。世間話をする中で、清水さんが20年ほど前に悪性リンパ腫を発症、余命3カ月と宣告されたが、脾臓(ひぞう)と胃を全摘出して回復したことを聞いた。

 泉さんは「同じような病気を乗り越えた清水さんは、闘病する千綴さんの希望になるのでは」と、励ましの手紙を書いてほしいと依頼した。清水さんは大役に悩みながらも、泉さんに手紙を託した。

 千綴さんは清水さんからの手紙を喜び、文通が始まった。写真撮影や登山が趣味の清水さんから届いた鮮やかな黄色のエゾノリュウキンカの写真を、千綴さんはベッド脇に飾っていたという。

 千綴さんからの手紙の一つには「ぜったいいっしょに山登りましょうね!やくそくだよ!」と鉛筆でしっかりと書かれていた。この手紙が届いて約2カ月後の5月、千綴さんは他界した。

 千綴さんは5人きょうだいの3番目。清水さんと一緒に山を登りたいとの願いは、きょうだいたちも知っており、「代わってかなえたい」と強く思っていた。昨年は天候が悪く、実現できなかった。

 今年は天候に恵まれた。午前9時、泉さんらも含めて計9人で阿寒湖側から雌阿寒岳の頂上を目指して出発。清水さんは、千綴さんから届いた手紙を持って登った。午後2時ごろ、頂上に到着し、オンネトーに無事下山した。

 清水さんと千綴さんの家族は今も交流が続く。「千綴ちゃんのきょうだいは『足寄のじいちゃん』と言ってくれる。今は俺が元気をもらっている」。清水さんは黒毛和牛の繁殖を手掛け、子牛も含めると約40頭を飼育している。大病を乗り越え、「周りの人たちに助けられて生きている」としみじみと語った。(平田幸嗣)

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