「一歩踏み出して」 米国留学の体験を自費出版へ 芽室出身の渡辺さん
「空港で激しく鼻をほじっている綺麗(きれい)なキャビンアテンダント(CA)を目撃した僕は、タイに住みたいと強く思い始めた」-。芽室町出身でタイの日本語教師アシスタント渡辺太一郎さん(24)が、半年間の米国留学の体験をつづった「ボクが見たカリフォルニア」を自費出版した。留学体験がタイでの就職につながったという渡辺さんは「一歩踏み出せば、新しい世界が広がっていることを知ってほしい」と話す。(高田晃太郎)
米国西海岸の音楽が大好きで、芽室中2年の時に1週間、ホームステイをしたことがある渡辺さん。「あの音楽がどんな場所で生み出されたのか、現地で暮らしながら感じたい」と、帯広大谷高を卒業後に進んだ北海学園大学(札幌市)4年時に休学し、ロサンゼルス郊外のシェアハウスを拠点に語学学校に通った。
本に登場するのは、ミュージシャンや俳優などの夢を追いかける、国籍も年齢もさまざまな人たち。ふと時計を見た時に「5時55分」のように数字がそろっていることを「宇宙のエネルギー」と信じるカナダ人には「そんなささいなことで前向きなエネルギーを生み出せる」と感心し、「今でも時計の数字がそろうと、彼のエネルギーが体中を走り回る」とつづる。
音楽活動をするために18歳で祖国を離れ、「楽しくない」と家族に泣き言を言う青年。地下鉄で人種差別の言葉を投げつけた男が、逆に暴力を振るわれ、血まみれになった事件。見知らぬ男から「かわいいから来い」と声を掛けられ、怖くなって逃げ出したことへの後悔。そうした体験談をシェアメートと共有しながら、「正しいかどうかは別にして、新しい価値観や考え方がどんどん広がっていった」という。
帰国後、就職活動がうまくいかず落ち込んでいた渡辺さんをタイに向かわせたのは、語学学校で出会った「常に前向きで一緒にいて楽しい」タイの友人の存在だった。大学最後の夏休みに旅行し、帰国直前にCAの女性が鼻をほじっている姿を見て「日本のように人目を気にせず、きっちりしすぎない」国柄に引かれ、移住を決意。日本の大学を通じ、タイの中高一貫の公立校で日本語教師アシスタントの職を得た。
昨春から働き始め、今年2月下旬に一時帰国後、新型コロナウイルスの影響でタイに入国できなくなり、6月から鹿追町の牧場で働いている。本の執筆は「自分にとって当たり前の話でも、他人に話すと面白がってくれた」ことから思い立ち、帰国中に書き上げた。秋にもタイに渡航予定の渡辺さんは「しばらくはタイに住むつもり。十勝の風土や酪農を学び、タイの生徒に伝えられるようになりたい」と話している。
76ページで100部発行。1500円。帯広市内のカフェフローモーション(西5南13)で扱うほか、インスタグラムのアカウント(@taichirolyn)から購入できる。