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まちの薬局「高橋安全堂」89年の歴史に幕 今月末閉店

「お客さまには感謝です」と話す(右から)松本店主と敏子さん

 創業89年の帯広市内の医薬品・化粧品販売「高橋安全堂」(大通南9、松本貞雄店主)が、11月末で閉店する。開店以来、同じ場所で営業を続け、市内に現存する薬局では古い歴史を持つ店の一つ。現店主の松本さん(82)と妻の敏子さん(73)は「高齢になり、元気なうちに店じまいをと思った。お客さまに支えられ、今は感謝しかない」としている。
(佐藤いづみ)

 高橋安全堂は、徳島県出身の故高橋要氏が別の薬局だったこの場所で薬の販売などを始めたのが最初。59年に現在の2階建ての店舗兼住宅を建設。高橋氏は業界団体の薬種商十勝支部長も務めていた。

 松本店主は富良野市出身。高校を卒業した19歳の時、紹介で同店に就職した。以来、要さん家族と一緒に暮らしながら、販売や配達に追われる日々を過ごした。

 66年に敏子さんと結婚後は家族で同居、店はますます忙しくなり、松本店主は「映画でも見たいなと思っても、全く時間が取れないほど」と振り返る。

 要さんには子どももいたが、要さんから病気を契機に「店を継いでほしい」と請われ、88年に店の権利を購入し、店主となった。以降も高橋夫妻と暮らし続け、97年に要さん(享年95歳)、99年に妻の恭さん(同90歳)をみとった。

 医薬品は松本店主、化粧品(資生堂)は敏子さんが主に担当した。定休は長く正月くらいしかなかった。「店と自宅が併設なので、営業時間外に来るお客さんにも対応してきた」と敏子さん。

 近年ではドラッグストアが増え、主力だった医薬品の売り上げは大きく減少したものの、松本夫妻を慕って来店する常連客は多い。市内南の森から20年以上、車で通っている女性(68)は「必要な薬を扱っていることもあるが、夫妻の明るさでつい長居してしまう。サロンのような場所だった」と惜しんだ。

 関係者によると、昭和初期から営業し続ける薬局は市内では数少ないという。松本店主は今年に入り、札幌に住む長男から「もう夫婦でゆっくりして」と言われ、閉店を決断した。松本店主は「今後は夫婦で旅行をするのがささやかな夢」と話した。

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