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東日本大震災から再起 新得の桑添さん夫婦「極楽寿司」評判に

家庭がすし店さながらに。若杉さん宅で家族の注目を浴びながら腕を振るう桑添さん(左)

 【新得】都内の名店で腕を鳴らし、コンテスト日本一にも輝いたすし職人の桑添達也さん(44)=町上佐幌基線105=が、妻の野の子さん(31)と二人三脚で手掛ける出張・実演の「極楽寿司(ずし)」が評判を呼んでいる。桑添さんは東日本大震災で実家の宮城県仙台市のすし店が被害に遭い、結婚を機に野の子さんの実家がある新得に移住して再起。「すしで人を幸せにしたい」と駆け回っている。

 11日夜、白衣と着物にそれぞれ身を包んだ桑添さん夫婦は、家族9人が待つ北広牧場(町新得基線85)社長の若杉政敏さん(58)宅を訪問。持ち運んだショーケースの中には、帯広市内の魚屋で仕入れた本マグロやホタテ、イクラなど十数種類の新鮮なすしネタが並んだ。桑添さんは一家の目の前で手際よく包丁を入れて握りながら、次々と注文に応えていく。

 客の8割は帯広市内の家庭で、結婚記念日やサプライズのホームパーティー、誕生日会などでの依頼が多いという。リクエストに応じ、妖怪ウォッチなどアニメキャラクターの巻きずしなども作っている。「味はもちろん、盛り付けや雰囲気づくりにも気を配っている」と桑折さん。皿は窯元を訪ねてオーダーしたという新得焼きを使用、ちょうちんや上り旗も飾り、家の中はすし店さながらだ。

 若杉さんは「小さな子どもがいる家庭は周りに気を使わなくていい。リラックスしてお酒も飲める」と笑顔。妻の裕子さんも「料理人が家に来てくれるなんて一部のセレブの話だと思っていた。仕事の終わりが遅い酪農でも頼めるのがうれしい」と喜ぶ。

 仙台市内のすし店に生まれた桑添さんは、中学校卒業と同時に上京。都内のすし店で修行を積んだ。プロ野球・福岡ソフトバンクホークス取締役会長の王貞治さんも、読売ジャイアンツ監督時代に足を運んだ名店という。20年前には飾り巻の技術を競うコンテストで日本一にも輝いた。

 2006年、父の政吉さん(74)が大病を患ったのを機に地元に戻った。しかし、店は11年の東日本大震災で半規模倒壊の被害に遭い、再建を諦め、会社員としての再スタートを決意した。就職先の札幌で野の子さんと出会い、昨年7月の結婚を機に新得へ移住。知人にすしの腕を振るっていたところ、口コミで評判が広がり、「諦めたすし職人の夢にもう一度、挑戦しよう」と昨秋から出張・実演を始めた。

 桑添さんは「高級すしの敷居を低くし、外食できない高齢者のもとへも訪問したい」と話し、野の子さんも「十勝全体を明るく元気にしたい」と笑顔を見せている。料金は一人5000円。小学生未満は無料、小学1~3年1000円、同4~6年3000円。3日前までの予約が必要。問い合わせは野の子さん(090・7939・4694)へ。(小寺泰介)

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