陸別で無暖房生活、東京から移住の秋庭さん
【陸別】「日本一寒い町」に、しばれマスターがいた!? 4年前に東京から陸別に移住し、現在は町地域ブランド開発推進専門員を務める秋庭智也さん(43)が自宅で「無暖房生活」を続けている。4シーズン目を迎えたこの冬も、室内ではダウンジャケットを着て毎日を過ごす。「できるだけシンプルに今ある環境を楽しみたい。今季は今までで一番暖かく、過ごしやすいですよ」と、寒さも“楽しみ”の一つに暮らしている。
秋庭さんは東京出身。都内のIT(情報技術)企業や国際協力NGO(非政府組織)の広報部を経て2012年、陸別町の地域おこし協力隊として着任した。独身で、町市街地の公営住宅で暮らしている。
無暖房生活は、趣味である登山の冬山訓練の一環として09年ごろに東京で始めた。「冬山登山では、氷点下の中で夜を明かしたりする。その点、無暖房生活は命の危険がないので、恵まれた環境」と話す。
暖房器具は一切使わないという自宅の室温は、最も寒いときで氷点下5度まで下がる。「一番寒かった」という最初の年は、部屋にあったタオルやスポンジが凍りだしたという。洗濯物は、日当たりの良い場所で2日かけて乾燥。室内で最も温かい冷蔵庫は、「食べ物を凍らせないために」活用する。
毎日記録している室内の最低温度では、最も冷え込むのが午前7時前後。今季は今のところ、氷点下2・7度が最低だ。
冬の寒さを乗り切るために、起床後はすぐにカーテンを開け、太陽光を室内に取り入れて熱をためる。部屋の中ではダウンジャケットとシューズを着用。冷えた体は風呂、湯たんぽ、白湯で温める。食事は自炊の際は鍋料理を作り、体を冷やす飲み物や食べ物は極力取らない。また、帰宅した際には「暖かい」と口に出すことで、精神を奮い立たせているという。
陸別に来てから、風邪などで体調を崩したこともなく、「無理をしていると感じたことはない」と笑顔。「今までで一番暖かい」という今季は、ダウンを着ずに就寝。寒さで目覚めることはなく、寝汗をかいた日もあった。
夏場は“無冷房”で過ごす秋庭さん。転居先が見つかるか、あるいはパートナーができ次第、無暖房・無冷房生活に区切りを付ける予定だ。「工夫して生活する中で、さまざまなことにありがたみを感じる。春が来るまで、陸別の寒さを楽しみたい」と穏やかに話している。(松田亜弓)