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ヒグマ対策学ぶ 生態について周知する課題も

過去にクマが出没した場所を研修会で視察する自治体職員ら(芽室町内で)

 十勝では今年、人間の暮らしに近い場所でのヒグマの出没が相次いだ。5月に帯広の森周辺や、帯広市との境にある芽室町北伏古地区で足跡が10件以上発見されたほか、6月には音更町木野の市街地にも出没した。主食の一つドングリが凶作だったため、人里近くに出没するクマは全国的にも見られ、各自治体は保護・駆除を含めた各種対策を講じるための人材育成が求められている。

 今月12、13の両日、道は地域の実情に応じたヒグマ対策を行うための人材育成を目的に十勝管内で講習会を開いた。有害鳥獣対策に従事する管内市町村職員ら約20人が参加。ヒグマの生態などの基礎知識を学ぶとともに、各市町村での課題をぶつけ合った。

 帯広百年記念館での座学では、道環境局生物多様性保全課の車田利夫主査やNPO法人EnVision(エンビジョン)環境保全事務所(札幌)の早稲田宏一研究員らが、ヒグマの生態について語った。ヒグマは効率的に食べ物を摂取しようと、覚えた味を繰り返し求める習性があり、農作物やごみを荒らすなどの「あつれき」(野生動物が人間に及ぼす被害)が生まれるという。その軽減法について両氏は、学習能力によって有害性が高くなった「問題個体」があつれきの起因となるため、この個体を選択して、的確に排除する「個体管理」が必要になることを説明した。

 実地講習は芽室町内を中心に行われ、同町での各種対策の先進的な取り組みが報告された。同町では、ハンターを有害鳥獣駆除員(町臨時職員)として採用し、当番制でパトロールを常時行い、出没情報があった場合に迅速に駆けつける体制を整えている。さらに、帯広畜産大との共同研究として、カメラを使った定点観測を行っている。

 また、新嵐山のキャンプ場周辺が、美生川を渡り帯広方向に向かう「通り道」となっていることから、キャンプ場の川側に金網を張り、物理的にクマの行動ルートを変えようという新たな試みを始めるという。

 しかし、対策には課題も多い。ある市町村職員は「駆除すると必ず『かわいそう』という意見が寄せられる」と悩みを打ち明けた。紋別市で9月、デントコーン畑を荒らしていた体重400キロ超のヒグマが駆除された際もインターネット上では「人間の勝手だ」「殺す必要があったのか」との意見が多数投稿されたことも話題となった。いたずらに住民を混乱させないため、市街地から離れた所での出没情報をどのように住民や報道機関に提供するか悩む声も。

 講習でヒグマの会(札幌)の山本牧副会長は「『クマが出没した』という情報だけではなく、どのようなクマが問題個体かなど、日頃からヒグマの生態を正しく周知していく必要がある」と語り、自治体職員や報道機関、住民らが正しい知識を持つことの必要性を訴えた。
(大谷健人)

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