二人三脚で手芸品作って半世紀 帯広の佐藤さん夫妻
帯広市内に工房「和古布細工々房(むかしぎれあそびどころ)」(東15南4)を構え、染め物やミニ着物などの手芸品を作り続ける佐藤久男さん(81)と妻の千鶴子さん(76)が、夫婦で作品づくりに取り組んで50周年を迎えた。半世紀の節目を区切りに、毎年開いてきた展示会を今年限りとすることを決め、2人は作品にこれまでの歩みを重ねながら、7月の開催を待っている。
9人きょうだいの末っ子として帯広で生まれた久男さんは、幼少の頃、体が弱く、外で遊ぶよりも母が編み物などをしている姿を見るのが好きな子供だったという。そのうち、三味線を始め、長唄や舞踊などの芸事にも取り組むようになった。戦後間もない時代で衣装の種類も資金も乏しかったため、「舞台の衣装を自分で作りたい」と考え、17歳のときに染め物を習い始めた。母にも刺しゅうを教わるなどし、衣装を作り上げてきた。
公務員となった後も芸事や染め物を続け、さらに工房も構えた。1964年に千鶴子さんと結婚。千鶴子さんもパッチワークや押し絵などに親しんでいたことから、翌年から夫婦で協力し、さまざまな手芸品を作るように。その傍ら、芸事や手芸の教室を持って指導にも当たり、「虫干し」を兼ねた展示会を毎年、工房で開いてきた。
しかし、6年前に久男さんが大病を患ったことで教室は閉じ、展示会についても「子や孫もおらず、どこかで踏ん切りを付けなければと考えていた。体力の限界も感じ、50周年を機に終わりにしようと決めた」(久男さん)。
最後の展示会に向け、工房には2人で作り続けてきたミニ着物や小物、傘福、つるし飾り、袋、タペストリーなど数々の作品が並ぶ。久雄さんは「どの作品にも思い入れがあり、作った当時の思い出がよみがえる」としみじみ話す。
展示会の案内状は帯広の画家五味和男さんが手掛けるなど、夫婦の回りには多くの笑顔が集まる。久男さんは「友人・知人、そして妻と人に恵まれ、最高の人生だった」と語り、千鶴子さんも「『今までご苦労さま。ありがとう』という気持ち」と久男さんを思いやる。最後の展示会で飾る作品は、希望者にはすべて譲る意向。ただ、2人での作品づくりは今後も続けていくつもりという。
展示会は7月の土・日曜日(4、5、11、12、18、19、25、26日)8日間。午前10時~午後3時。観覧希望者は事前の連絡が望ましい。工房はエールセンター十勝近く、ばらと児童公園横。問い合わせは久男さん(0155・23・7687、090・2050・7687)へ。(大谷健人)