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住血吸虫症を即診断 帯畜大の河津教授ら国際共同研究に参加

住血吸虫病の診断法開発を進める帯畜大の研究グループ。手前左が河津教授、同右がアンゲレス博士研究員

 発展途上国の感染症制圧を目的とした官民基金「グローバルヘルス技術振興基金」(GHITファンド)が投資する国際共同研究に、帯広畜産大学から初めて原虫病研究センターの河津信一郎教授(53)=獣医学博士=の研究グループが携わっている。アジア地域を中心にまん延する「住血吸虫症」の発症を即座に確認する診断法の開発に取り組み、現地での試験を重ね早期の実用化を目指す。研究期間は今年4月から2017年3月まで。

 同基金は日本政府、日本の製薬会社6社と、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(米国)などが連携して設立した。世界の貧困層を苦しめる、マラリアや結核などの感染症制圧に向けた薬剤開発を支援している。今回の共同研究には同基金が7790万円を助成し、帯畜大と東大、米国とフィリピンを拠点とする各機関の4つの機関で進めている。

 河津教授よると、住血吸虫症の発症の有無を確認する方法は現在、検便による顕微鏡検査が一般的。ただ、診断する人の技量に左右されるのに加え、一度に大量に行うことで時間がかかるなどの課題がある。感染を見逃すケースもあり、投薬による治療を途中で中断してしまう患者もいるという。

 共同研究では感染の有無を一滴の血液から、即座に判断する診断法の開発を目指す。河津教授は、感染源となる抗原(寄生虫)と、体内に作られた抗体が結合する「抗原抗体反応」に着目。あらかじめ抗原を塗付した試験紙に血液中の抗原が結合すると、試薬が発色する仕組み。目視で簡単に感染を確認でき、インフルエンザ検査や妊娠検査薬でも同様の仕組みが使われている。

 河津教授の研究グループでは、既に抗体に効率よく結合する3種類の抗原を特定し、人工的な開発にも成功。今後はさらに抗原の候補を増やしつつ、米国のメーカーが製品化、フィリピン大マニラ校の現地での使用結果などを踏まえ、改良を重ねていく。

 河津教授は「住血吸虫病は日本でも流行した病気。日本の知識を、アジアで苦しむ人たちのために生かしたい」と意気込む。研究グループの一員でフィリピン出身の博士研究員ホセ・アンゲレスさん(36)は「母国で苦しんでいる人たちを助けたい」と話している。(高津祐也)

<住血吸虫病>
 巻き貝を宿主とする寄生虫が発症源で、汚染された水に触れると感染する。発熱、腹痛、下痢、肝硬変などの慢性症状を引き起こし、重篤化すると死に至ることもある。世界保健機関(WHO)の推定では、世界で2億人以上の感染者がいるとされる。



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