「黒んぼ」建て替えへ 老朽化に伴い刷新
赤と黒を基調とした店内に落ち着いたジャズの音色。仕事を終えたビジネスパーソンが、グラスを傾けながらゆったりとした時間を楽しむ-。帯広市中心部で夜の憩いの場として親しまれてきた老舗バー「黒んぼ」(西3南10、後神健二マスター)が、12日の営業を最後に建て替え工事に入る。1935(昭和10)年に建設された建物は築80年を迎え、老朽化が進んでいるためだ。常連客からは惜別の声が聞かれると同時に、新店舗への期待も高まっている。
店は、56年に後神さん(47)の祖母艶子さん(享年71)が、「ニッカバー」の名でオープンさせた。数年後に現在の店名に変え、父の継彦さん(享年64)から2004年にバトンを受け継いだ3代目が後神さんだ。
戦前に建てられた建物は老朽化が進み、カウンター内の狭さは課題の一つだった。4年前に土地と建物を所有者から買い取り、「できる限り長く店を続けたい」(後神さん)と建て替えを決意。隣の空き店舗とともに取り壊し、8月上旬に新店舗のオープンを目指す。
新しい店は作業スペースを広くさせる他、営業スペースもゆとりを持たせ、これまで以上に居心地の良さを追求する。最大の目玉は新たに導入するスピーカー。業界屈指のスピーカー製造メーカー「JBL」が誇る最高峰モデル「エベレスト」2台を設置し、良質な音で客を出迎える。
建て替えを前に、常連客からは「まだまだこの店でやれるよ」「良い雰囲気だったのにもったいない」などと名残惜しむ声も寄せられているという。
後神さんは「祖母と父が守ってきたこの店の雰囲気は絶対に変えられない」と話し、「59年という長い間、お店を続けてこられたのはお客さんに支えていただいたおかげ。新しいお店でもおいしいお酒と良い音で恩返しができれば」と意欲を新たにしている。(土屋航)








