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探検隊が行く~裏十勝めぐり「旧厚内トンネル(浦幌)」

雪深い森を抜けた場所にある旧厚内トンネルの入り口。高さ3~4メートルの巨大なつららが幾重にも重なり合い神秘的な雰囲気を醸し出す

 雪をかき分け、坂を上ったり下ったりして進んだ雪深い森の中に、十勝の近代化を支えた産業遺産がひっそりとたたずんでいた-。十勝毎日新聞探検隊が大自然の陰に隠れた歴史と先人の足跡を再発掘する「裏十勝めぐり」第3弾は、浦幌町のJR根室線旧厚内トンネルを訪ねた。現場では真冬の寒さが織り成す神秘的な景色が広がっていた。(写真・塩原真、文・井上朋一)

 旧厚内トンネル(延長325メートル)を訪ねたのは10日午後。帯広百年記念館学芸調査員の持田誠さんに案内役を務めてもらい、カメラマンと記者の3人で現場に向かった。

 目指す同トンネルは、十勝で最初に鉄道が開業した浦幌と釧路管内音別との間にあり、白糠丘陵を貫いている。1903(明治36)年に開通して1990年までの90年弱にわたり使われた。現在は、同トンネルの南側数十メートルのところを現用線が走り、十勝と釧路を結ぶ“動脈”となっている。

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 今回の取材は、JR北海道釧路支社から特別に許可を得た。持田さんはこれまでに2度、現地調査を行ったが真冬の積雪時は初めてという。冬山登山に使われるスノーシューを用意した。

 浦幌町厚内の国道38号から雪原に入り、足が溝にはまる場面も。森の中では、雪を踏み固めながらエゾシカなどの足跡を横目にしながら前へ進んだ。

旧厚内トンネルの帯広側入り口にある銘板

 同トンネル釧路側に着くと、3人で息を飲んで目前の景色を見つめた。入り口には高さ3~4メートルの巨大なつららがいくつも重なり合い、神秘的な雰囲気を醸し出していた。まるで青白く重厚なカーテンが幾重にもかかっているようだった。

 持田さんによると、入り口のレンガの隙間から少しずつ水が染み出してこの風景を作り出したとのこと。「白糠丘陵は昔、難所だった。鉄道を通した先人たちが山や沢を自ら歩いて、建設の負担が少ない場所にこの路線を通したことがよく分かる」と解説した。

 このトンネルを通じて、十勝の草創期に小豆など農産物や木材などが管外へ運ばれ、釧路から米などを運び込むためにも役立てられた。十勝が近代的な発展を遂げた時期に使われた産業遺産だ。

旧厚内トンネルに向かう途中ではJR根室線を走る列車が間近に見え、旧線と現用線の近さがよく分かる

 持田さんは「近代建築の粋を集めて作られたトンネル。老朽化で内部は崩落している場所もあるが、十勝近代化の証しとして残すことができれば」と語る。

 産業遺産として残すだけでなく、観光資源としても活用できれば、十勝の人たちにとっても地域の誇りになるのではないか-。そう感じながら現場を後にした。


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