道展、十勝から4人が入賞 小笠原さん新会員に
第89回道展(北海道美術協会主催)で、小笠原洋子さん(72)=帯広市在住=が新会員に推挙された。十勝における油彩での会員(物故者を除く)は村上陽一さん、大崎和男さんに続く3人目で女性は初。会友賞には版画の奥秋広美さん(61)=同=が選ばれた。この他、佳作賞では佐藤美和子さん(53)=芽室町在住=が2回目、浅野公宏さん(64)=帯広市在住=が初の受賞となった。
小笠原さんは約30年前から道展に出品し、2003年から3年連続で佳作賞を受賞し06年に会友推挙、昨年会友賞を受賞した。作品「方舟(刻の記憶)」(油彩、F130号)は、小笠原さんが近年のテーマとしている「石舟シリーズ」の作品。不安定な世界情勢などといった世相の中でも希望を探し求める心の象徴として描いた。近年は方舟を自由に描こうとするあまり表現が複雑になりがちだったという。今回は締め切り4日前になって「原点に戻り、『これが描きたかったんだ』という作品になった」(小笠原さん)という。「十勝から油彩の会員が少なく、長年の念願だった」(同)会員に推挙されたことについて「周囲の支えがあったからこそ。これからは作品を見る目も厳しくなる。自分も今以上に作品を追求していきたい」と語る。
奥秋さんは絵画やステンシル版画から木版画に転向してからわずか8年での快挙。「青い鳥部イリュージョン」(108×83)は、自身のテーマである「羽」を持つウサギと、パンドラの箱、びっくり箱のような何が出るか分からないわくわくを表す「ボックス」を組み合わせた。「始めたのが遅かった分、人の何倍も努力するようにした」と話す奥秋さん。来年以降は会員への昇格も期待される。「まだまだやりたいことがいっぱい。自分の世界観を作り上げていきたい」と話している。
道展に出品し始めてから8年目で初の佳作賞に選ばれた浅野さんの「樹魂2014」(水彩、F80号)は、これまでの題材である「原木」はそのままに、今回は写実的表現に自身の心象の表現を加えた。「自分の精神世界を表現することに初めて挑戦し苦労した分、受賞はうれしい」と語る。「unison 耳を澄ませば」(油彩、S100号)で一昨年以来の2回目の佳作賞となった佐藤さんは、「二項相反」を画面の左右で表現していたものを、今回は上下で表現することに挑戦。ストーリーがはっきりするように多角的な「仕掛け」や色彩を意識したという。「作品にはまだまだ反省点も多く、まだまだやれる」と意欲を燃やしている。(大谷健人)
来年1月22日~27日には帯広市民ギャラリー(JR帯広駅地下)で移動展が開催される。
その他の入選者は次の通り(敬称略、管内関係分)。
▽日本画=小松志津江(清水)、山本永子(幕別)
▽油彩=飯森篤志、鎌田朝緒、草刈喜一郎、瀬戸忠男、細野玲子、森昌子(以上帯広)、田之島篤子、水尻悦子(以上音更)、斉藤啓子(新得)、OH hanui(清水)、山田陽子(芽室)、岡本麗子(豊頃)
▽水彩=山田剛弥(帯広)、米谷百合子(音更)
▽版画=匂坂敏郎(帯広)、佐々木裕二(新得)、千葉定是(幕別)