ファン酔いしれる 囲碁棋聖戦大盤解説会 白熱の戦い
大勢のファンを前に軽妙なトークを披露する宮沢九段（中央、右は富士田四段、左は下坂二段、２０日午後３時ごろ、塩原真撮影）
井山裕太六冠・棋聖（２４）に山下敬吾九段（３５）が挑戦する囲碁の「第３８期棋聖戦」（読売新聞社など主催）七番勝負第４局は、２１日午前９時、帯広市内の北海道ホテルで対局を再開した。同戦に合わせ、いずれも帯広出身のプロ３棋士による大盤解説会（読売新聞社、日本棋院、関西棋院、十勝毎日新聞社主催）が２０、２１の両日、同ホテルで開かれている。各地からの囲碁ファンでにぎわい、プロ棋士の軽妙なトークや深い解説を楽しんでいる。
解説会は富士田明彦四段と、下坂美織二段が担当、途中、立会人の宮沢吾朗九段も加わり、地元ならではの和やかな雰囲気に包まれている。会場内のスクリーンには、対局室に設置されたカメラで、盤上と、差し向かう２人が映し出され、対局の緊迫感が伝わる。
２０日午後の解説会では、山下九段が打つ手を考える「次の一手クイズ」も行われ、序盤の重要な局面で来場者は首をひねって投票した。富士田さん、下坂さんのサインなどが当たる抽選会も盛り上がった。
下坂さんはＮＨＫ・Ｅテレで放映中の「ＮＨＫ杯テレビ囲碁トーナメント」の司会を務めており、慣れた様子で、分かりやすく丁寧な語り口調で進行した。富士田さんは「最近調子が戻って来た。地元のエネルギーを得て頑張りたい」と語ると、会場から大きな拍手が起こった。幼少時からの２人を知る地元の囲碁愛好者も多く“凱旋”に目を細めていた。
「次の一手クイズ」で唯一正解し、山下棋聖時代の扇子などの賞品を得た音更町柳町の会社員佐々木日出夫さん（６２）は「山下九段と同じ攻める囲碁が好きなので、その気持ちで考えた。うれしい。山下九段にぜひ頑張ってほしい」と話していた。
山下九段（奥）の封じ手を井山棋聖（左）に示す宮沢九段（右、２１日午前９時ごろ、塩原真撮影）
◆白熱の戦い続く、初日は超スローペース
対局の１日目は超スローペースで進んだが、互いの鋭い読みと駆け引きがぶつかり合う展開で、戦いは終盤に向けて一気に激しさを増しそうだ。対局は２１日夜にも決着する見通し。
２日目の２１日は午前８時５４分、前日に引き続いて山下九段が対局室に先に入り、碁盤や碁石が入った碁笥（ごけ）の周囲を丁寧に拭いた。同８時５６分、井山棋聖が入室。両者は対局開始前のわずかな時間、精神を集中するかのように目をつぶるなどし、対局室全体に張り詰めた緊張感が漂った。
同９時になると、立会人の宮沢吾朗九段（帯広出身）が「時間になりました。並べ直してください」と声を掛け、２人は前日まで打った２９手までを打ち直した。宮沢九段は前日に山下九段が記した「封じ手」を開封、「３の十五」と読み上げて井山棋聖に示し、対局が再開した。
３連勝と防衛王手の井山棋聖に、後がない山下九段が反転攻勢を仕掛ける１局。持ち時間は８時間だが、初日に３０手まで進まないのは極めて遅いという。宮沢九段は「一気に勝負を決めたい井山棋聖、背水の陣の山下九段とも、勝負に懸ける思いは相当。攻めの山下九段、力とバランスの井山棋聖双方の棋風と気迫が真っ向からぶつかり合う激しい展開になりそう」と話していた。（原山知寿子）
