タンチョウ 十勝に定着 餌場で初確認も
【帯広・音更・幕別】国の特別天然記念物のタンチョウが、十勝での生息範囲を広げている。生息地の分散化と保護を進める、十勝エコロジーパーク利用促進協議会・生物ワーキンググループ(WG、代表・柳川久帯広畜産大教授)が新設した相生中島地区(十勝川と札内川合流地点付近の中州)の餌場で、16日、餌を食べている様子が初めて確認された。関係者は市街地で観察できる環境は国内でも非常に珍しいとし、保護活動の定着と適度な距離を保つ観光素材に手応えを感じている。
同WGは、ウイルスなどでの大量死のリスクを避けるために環境省が進める「越冬地分散事業」に賛同。2009年から独自に給餌場設置と餌の補給をしている。今年は同パーク内の3カ所に加え、十勝川温泉地区に新たに2カ所を増やして計3カ所とし、相生中島地区にも新設。11月2日に設置作業を終え観察を続けている。
越冬地には厳冬期でも結氷しない水域が「ねぐら」として必要になる。相生中島地区はこうした生息環境に合致し、目撃情報があるため新設した。帯広、音更、幕別との境界で洪水対策で設けた掘削水路の一部を活用、河川管理者の帯広開発建設部帯広河川事務所(大串弘哉所長)から占用許可を得て設けた。
同パークで栽培した乾燥デントコーンをにお積みし、中にデントコーンを詰め、下部に穴を開けたバケツを設置、コーンが自動的に供給される。16日午後1時ごろ、NPO日本野鳥の会十勝支部(室瀬秋宏支部長)のメンバーがつがいとみられる2羽を確認。餌をついばむ様子を撮影した。
同支部によると、タンチョウの生息確認数は釧路地方での給餌活動が奏功し、旭川、苫小牧などにも広がり、道内で約1500羽(12~13年)まで増加した。十勝の確認数は1973年につがいで2組だったが、80年代に約10組、95年で24組を確認。08年には50つがいとなった。現在の生息数は把握しきれていないが、営巣地も十勝川沿いの湿地帯から足寄まで広がっている。
一方、タンチョウはなわばりを持つため、釧根地区は「過密状態」となり、営巣地としての十勝の役割が高まりそう。同WGは「世界で3000羽しかおらず、絶滅の危機にあることは変わらない」と指摘。「十勝川温泉地区でも安定した飛来数が見られ、貴重な観光資源になり得る。活動の趣旨を理解し近づかずに見守ってほしい」と呼び掛けている。(原山知寿子)
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