江戸屋70周年 「何これうまっ!」をこの先も~先読み新年号
塩野谷壯志(しおのや・まさし)社長(44)
世界へ羽ばたく十勝産珍味の底力
「70年もの長きにわたり事業を続けることができたのも、創業の地である十勝の皆様のおかげです」。伝統と看板を背負う塩野谷壯志社長(44)はこう力を込めます。
サケやコマイなどの海産物をはじめ、肉や乳製品、豆類、ドライフルーツなど多岐にわたる乾製品を開発・販売する同社。1955年の創業以来、北海道産の珍味で食卓を支え、今や道内トップシェアを誇るメーカーに成長しました。「最高の品質の製品を提供する」をモットーに、北米や東南アジア諸国にも珍味文化を発信しています。
「祖父の塩野谷東司が夫婦二人三脚で珍味卸売業を立ち上げたのが始まり。当初は一斗缶でピーナッツを販売するなど、業務用が中心でしたが、ポリ袋の普及によって小分け販売が可能になり、一般家庭でも親しまれるようになったと聞いています」(塩野谷社長)。
小売業への卸売に活路を見いだし、やがて会社は成長軌道に。父・和男氏の代にはスーパーやコンビニ、大手百貨店へと大きく販路を広げました。同時に農業王国に本社と工場を構えるメーカーの強みを生かし、郷土品開発にも着手。現在では北海道産ミルクのアイスクリームをはじめとする「乳蔵」ブランド、野菜や豆を真空フライ製法で揚げた加工品など、地域とのコラボレーションで全国展開に弾みをつけています。数ある商品の中でも、油を控え、素材の風味と食感を引き出した「じゃがいもザクザク」は、大手航空会社のPBにも選ばれる同社の新たな顔となりました。
旨さと安全両立 食品企業の誇り
これら食のトレンドや需要に応える商品開発に欠かせないのが、徹底した安全性の確保です。珍味メーカーとして、いち早く賞味期限の印字やHACCP(ハサップ)の対応工場70周年を迎える江戸屋の本社
江戸屋の札幌支社を導入。また、食品業界で研さんを積んだ現社長の手腕により、食品安全の国際規格FSSC22000も取得しています。塩野谷社長は「安全性の取り組みは、社員一人一人の高い意識と努力なくして成り立ちません」と現場をねぎらいます。
目指すのは「何これうまっ!」の感動を生む価値ある商品作りと、「社員の経済的・精神的生活の向上」の二つ。同社のたゆまぬ挑戦が続きます。
江戸屋70周年 「何これうまっ!」をこの先も~先読み新年号
■沿革■
1955年 珍味卸売業として帯広市に創業
62年 江戸屋を設立
66年 北見支店を開設
68年 釧路支店を開設
71年 札幌支店を開設
89年 郷土品開発部署を独立し、ノース・ピーを設立
2005年 帯広にHACCP対応工場建設
11年 江戸屋とノース・ピーが合併
17年 ノース・ピー事業部がアイスクリーム工場を新設
21年 東京・日本橋に直営店「あてのわ」開店
23年 東京コレド室町で営業していた「干物まる」を事業継承
■概要■
本社 帯広市西19南1ノ7ノ13
資本金 3570万円
従業員 55人
年商 26億円(2023年3月期)