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衛星画像を使った作条の可変施肥でキャベツの生育が揃います

道総研 十勝農業試験場 研究部 農業システムグループ・生産技術グループ
株式会社ズコーシャ

1.背景と目的
 キャベツ作では収穫機を使用した一斉収穫の取り組みが進んでいるが、圃場内歩留まりの向上や生産量の安定化が求められており、圃場内の土壌要因により生じる生育の不均一性を改善して生育を斉一化する技術開発が重要である。そこで、リモートセンシング技術を利用して圃場固有の要因により生じる土壌の不均一性を把握し、キャベツを対象にした作条による基肥可変施肥技術の実証を通じて、その生育の斉一化効果を明らかにすることを目的とした。

2.試験の方法
1)キャベツ生育の不均一性をもたらす土壌要因の把握とマッピング
・ねらい:多雨年の衛星画像を用いて、てんさいとばれいしょをINDEX作物として生育の不均一性をもたらす土壌要因をマッピングする。
・試験項目等:試験場所;十勝管内現地、使用した衛星画像;多雨年(2016年)の生育期衛星画像、裸地時のRGB画像、調査項目;土壌理化学性、キャベツ生育・収量、起伏等の地形
2)キャベツ生育の不均一性をもたらす土壌要因の把握とマッピング
・ねらい:キャベツの生育に影響を与える土壌要因を検証すると共に、その要因が窒素肥沃度である圃場に対し可変施肥試験を実施して生育の斉一化効果を明らかにする。
・試験項目等:試験場所;十勝管内現地、検討技術;施肥マップ対応型4畦作条施肥機(サークル機工株式会社製、CC-mm)による基肥可変施肥、調査項目;生育・収量

3.成果の概要
1)十勝管内鹿追町の黒ボク土地帯を対象に、てんさいおよびばれいしょ圃場123筆において、2016 年7 月の衛星画像から取得したNDVI と、同年4 月の裸地画像から推定した土壌腐植含量の相関関係を解析した結果、土壌腐植含量とNDVI に正の相関があった圃場が約4 割、負の相関があった圃場が約2 割、その他が4 割であった(表1)。負の相関があった圃場は作物生育が窒素肥沃度より排水性に影響を受ける圃場と判別でき、可変施肥の対象から除外するとともに、正の相関があった圃場は窒素肥沃度の高低に作物生育が影響を受けていると推定され可変施肥が有効な圃場として抽出した。
2)作物生育が土壌腐植含量に正の相関があるとして抽出した圃場において、施肥マップ対応型 4 畦作条施肥機を用いた一斉収穫向け移植キャベツの基肥可変施肥試験を実施した。基準施肥量は、現地で指導されている水準に基づき、土壌腐植含量の差 1~4%の範囲で 3 段階に分類し、±40kg/10a とした(図 1)。その結果、土壌腐植含量が少ないと推定され増肥した調査点では、1球重の増加が確認できた。一方、土壌腐植含量が多いと推定され減肥した調査点では、1 球重の低下は認められず、定量施肥区と同等の収量を維持しつつ施肥量削減が可能であった。供試した 3 カ年計 6 作型全てで可変施肥区は定量施肥区に対し規格内収量が 3%以上の増加を示すとともに、1 球重の変動係数(CV)は小さくなった(表 2)。施肥マップ対応型4畦作条施肥機は作業幅が 2.4~3.0m で、細かなメッシュサイズの施肥マップに対応が可能となることから、作条施肥を基本とする多くの作物や、小区画で栽培する作物の可変施肥に対応できる。

4.留意点
1)本成果は黒ボク土地帯で得られたものである。
2)供試した作条施肥機で可変施肥を実施するためには専用の接続機器と操作端末が必要で、対応する施肥マップの作成は株式会社ズコーシャに委託する。
3)土壌腐植含量と NDVI の相関解析で正の相関が得られなかった圃場については、窒素以外の生育制限要因が考えられるため施肥ガイドを参考とした一律施肥が望ましい。
4)本研究は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「スマートバイオ産業・農業基盤技術」の支援を受けて実施した。


詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 農業システムグループ
電話(0155)62-2431
E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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