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翌春に出荷! 加工専用キャベツ「ジュビリー」の作り方

道総研 十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ・農業システムグループ

1.背景と目的
 加工・業務の需要に対応した国産キャベツの安定供給体制の確立のため、大規模生産に向けた省力化には直播栽培の導入が考えられる。海外の加工専用品種は在圃性(収穫可能になった時期から時間が経過しても裂球などの品質低下が起きない性質)に優れ直播栽培しても収量不安定のリスクが軽減でき、多収であるためコスト低減も期待される。加熱調理用途に限定されるが、貯蔵性が優れ長期貯蔵が可能である。
 本課題では、加工専用キャベツの直播栽培技術を確立し、安定供給に向けた長期貯蔵(4ヶ月以上)の可能性を明らかにするとともに、直播栽培を導入した場合の経済性を評価する。

2.試験の方法
1)直播栽培によるキャベツ生産の安定化技術の検討
  直播栽培における出芽のばらつきと耐裂球性の関係から、最適な播種時期および生育日数を検討する。さらに、収量安定のための栽植密度の検討も行う。
2)直播キャベツの貯蔵性の評価および用途別の実需者評価
  加工原料として安定供給するために、利用可能な貯蔵期間を調査し、窒素施肥量と貯蔵性の関係を検討する。品種特性を活かせる加工用途を探索し、実需者の評価を実施する。
3)加工専用キャベツを直播栽培で導入する場合の経済性評価
  従来品種の移植栽培に対する「ジュビリー」の直播栽培の収量当たり生産費を評価する。

3.成果の概要
1)5月上旬~6月下旬に直播した「ジュビリー」の出芽率は、播種後2週目までにおおむね90%に達する(表1)。極端な干ばつ条件では1か月後に90%に達するが、一球重のばらつきが大きい(データ略)。
2)畝間を一定とし株間を変えて栽培した「ジュビリー」の一球重は、株間30cmに比べ40cm(栽植密度:4,167株/10a)および50cmで大きく、規格内収量は株間40cmが安定して高い(図1)。
3)「ジュビリー」の一球重は5月上旬~下旬播種では播種時期が遅くなるのに伴い増加し、生育日数が長くなった場合も裂球の発生は極めて少なく、160日以上の規格内収量は8.6~10.7t/10aである(表1)。
4)「ジュビリー」の直播栽培により安定的に9t/10a程度の収量を得るためには、播種時期を5月上旬~下旬、栽植密度を4,167株/10a程度、生育日数を160日以上とすることが適当である。
5)低温貯蔵した「ジュビリー」の翌年4月の健全部重量割合(歩留)は56.5~72.2%であり、「おきなSP」に比べ明らかに高く、同一年の比較では高湿度(100%RH)で高い(図2)。窒素施肥量の違いによる貯蔵性の差は認められない(図2)。
6)従来から示されている加熱調理用途以外で、「ジュビリー」の特性(葉が肉厚で歯応えが強い)を活かした用途として、ロングライフサラダや冷凍加工品への利用が考えられる(データ略)。
7)移植と比べて直播の10a当たり投下労働時間は短く(データ略)、「ジュビリー」の直播の全算入生産費は収穫直後で低いが、貯蔵後だと調製等で高かった。従来品種の移植と比べて、「ジュビリー」の直播の1ケース当たり生産費は収穫直後で低く、貯蔵後だと減耗等で高かったが、出荷月の生産者受取単価(試算)を下回るため、再生産可能と考えられる。従来品種の移植と比べて「ジュビリー」の直播の所得(参考値)は、収穫直後と貯蔵後の両方で高いため、経済的なメリットも期待できる技術と考えられる(表2)。

4.留意点
1)播種時期が干ばつ条件の場合は、出芽の遅れや収穫時一球重のばらつきが大きくなることがある。
2)本試験で収量調査した「ジュビリー」の球高は15~23cmであり、現在国内で普及している国産収穫機の適用範囲(10~18cm)に収まらないことから、現時点で国産収穫機による収穫は推奨されない。


詳しい内容については、次に問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 生産技術グループ
電話(0155)62-2431
Email: tokachi-agri@hro.or.jp

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