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雑草を抑えて収量も安定 秋まき小麦有機栽培のコツ

道総研 中央農業試験場 農業環境部 生産技術グループ
病虫部 病害虫グループ

1.背景と目的
 有機栽培小麦の供給量不足や有機生産者の経営規模拡大傾向により小麦有機栽培面積増加の機運が高まっており、パン用途にも対応できる高品質な有機栽培秋まき小麦を安定生産するための技術が求められている。
 そこで、播種期、播種量および肥培管理法の組合せにより、越冬性向上と雑草抑制を図り、高品質な小麦の安定確収のための技術を開発する。また、主要病害の発生状況と生育・収量への影響を明らかにする。

2.試験の方法
1)現地事例調査
 秋まき小麦有機栽培技術開発の参考とするため、現地事例を調査する。
2)安定確収および雑草抑制技術の開発
 秋まき小麦有機栽培における播種期(早期播種:8月下旬~9月上旬、標準播種:9月中旬)、播種量(255粒/m²、340粒/m²)〕、施肥法および施肥量〔雪上施肥(3月中旬;窒素0・4kg/10a)、止葉期追肥(5月下旬;窒素0・4・8kg/10a)や間作緑肥(シロクローバ0.3kg/10aを小麦と同時播種)の有無等を検討し、越冬性の向上、収量・子実タンパク増加および雑草抑制のための栽培技術を開発する。
3)小麦主要病害の発生評価
 有機栽培条件における主要病害(雪腐病、赤さび病、赤かび病)の発生状況およびその要因を明らかにする。

3.成果の概要
1)過去5年の収量やタンパクは生産者によって幅があり、その一因として窒素施肥量が0~12(平均5)kg/10aと大きく異なることが挙げられた。播種日は8月25日~9月25日(同9月9日)、播種量は約200~600(同400)粒/m²で、約1/3の生産者が雑草対策として間作緑肥を栽培していた。
2)播種時期については、早期播種は越冬前の生育が前進するため起生期の乾物重が多く、越冬性に優れていた(図1)。しかし、早期播種では茎数の淘汰から穂数が不足し、標準播種よりやや低収となった(図2)。
3)播種量については、340粒/m²の越冬前茎数や乾物重、窒素吸収量が255粒/m²より多かった。収量は早期播種では340粒/m²、標準播種では255粒/m²が多い傾向にあった(図2)。
4)3月中旬に雪上施肥した発酵鶏ふんの窒素は止葉期までに75%溶出し(図3)、生育・収量を改善した(図4)。
5)止葉期の追肥量が増えるにつれ、収量、タンパクが増加する傾向にあった(図4)。
6)止葉期追肥を行った場合、「きたほなみ」では安定して300kg/10a以上の収量が得られた。一方、「ゆめちから」ではタンパク10%以上の産物が得られた。
7)成熟期の雑草生育量は熱水抽出性窒素が高い現地や止葉期追肥量が多い試験区で多かった。主な草種は、スズメノカタビラ、ハコベ、ナズナであった。間作緑肥により雑草量が大幅に抑制された(図5)。
8)早期播種では雪腐病発病度が高かったが、越冬後の作物体残存量は多かった(図1)。赤さび病の病斑面積率は止葉期の窒素吸収量に比例して高く(図6)、止葉期追肥により高まった。開花期の少雨により赤かび病は3年とも少発生で、処理間差はなかった。
9)以上より、秋まき小麦有機栽培で収量性優先の場合は9月中旬に255粒/m²播種し、越冬性優先の場合は8月下旬~9月上旬に340粒/m²播種するのが最適である。窒素施肥量は基肥-雪上(3月中旬)-止葉期:4-4-4~8kg/10aを目安とする(表1)。

4.留意点
1)過剰な追肥は赤さび病発病を助長することに留意する。
2)本試験は雪腐大粒菌核病の発病がない圃場で行われた。
3)早期播種はコムギ縞萎縮病の発病を助長する恐れがあるので、発生地域では品種に留意する。


詳しい内容については、次へお問い合わせください。
道総研 中央農業試験場 農業環境部 生産技術グループ
電話(0123)89-2001 E-mail:central-agri@hro.or.jp

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