農に向き合う~農業経営部会会員紹介「広尾・ミックランデーリィ」
1.乳牛改良に注力。親子で「宇都宮賞」
隣町の酪農家の二男として生まれた角倉光記代表は、24歳だった1977年、広尾町の現在地に新規就農者として入植した。乳牛13頭(搾乳牛6頭)でのスタート。帯広畜産大学を卒業後、カナダで4年間酪農を学んだ経験を生かして乳牛改良に力を入れた。その結果、経産牛1頭の乳量は1万1000~2000キロと生産量を伸ばし、現在は乳牛600頭(同300頭)まで規模拡大を図った。
指導農業士、JAの役員として地元の農業後継者や新規就農者の育成にも積極的。十勝乳牛改良同志会会長としても活動した。こうした功績が評価され、2006年には「北海道酪農の父」にちなんだ第38回宇都宮賞(酪農経営の部)を受賞。父博さんと親子2代での受賞となった。
2.こだわりの木造牛舎
「牛は手を掛けて投資すればするほど返ってくる。牛は裏切らない」。酪農業の醍醐味を角倉代表はこう語る。しっかりと飼育していけば乳量は増え、経営に貢献してくれるという。角倉さんが辛かったのは、今から15、16年前、乳牛がヨーネ病にかかり処分したことだった。大事に育てた牛を失ったダメージは大きく、それ以来、規模拡大は他からの購入ではなく牧場内での自然増頭に限っている。
こだわりは改良の方法、飼料作りなどあるが、その一つが牛舎の造り。牧場内の牛舎は全て木造で建てられている。「人も木の住宅が好き。人間にとっていいことは動物にもいいはず」と角倉代表。木造の牛舎を訪れた同業者や取引先からは「夏は涼しく、冬は暖かい」「空気が柔らかい気がする」などの声が上がる。鉄骨造りより建設期間はかかるものの、「建築費は鉄骨とそん色ない」と話す。
3.農経部会はポリシー持つ集まり
国民の食を支える農業分野には、他業種に比べても国の補助が手厚いと言われる。角倉代表は「国などの支援が少ない一般企業は頑張っている。その経営のノウハウを勉強できればいい」と同友会に入会した。異業種の経営者との交流は刺激になっている。農業経営部会の同業者も個性あるメンバーが入っており、「独特のポリシーを持っている人が多い。尊敬する人たくさんいて、また刺激になる」。牧場から帯広までは片道70キロの道のりだが、「従業員がいるおかげで外に出られるようになった」と語る。
4.新牛舎完成、次世代へ
約250頭を飼育できる新しい牛舎が間もなく完成する。さく乳ロボットを4機導入して、人手が少ない中でも運営できる体制を整える。もちろん木造で、床面積約3800平方メートルの建物内は、梁がめぐらされている。天井から吊るした照明は、目に優しい「無電極ランプ」を採用。米国に視察して換気方法にもこだわった。
集大成となる牛舎を完成させ、二男への事業承継を視野に入れている。「酪農は毎日同じ作業の繰り返しだが、1年の成果は経営に出る。反省を次の年の戦略に生かし、結果を出していくのが面白い」。次世代に酪農と経営のやりがいを伝えている。
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