農に向き合う~農業経営部会会員紹介「鹿追・中野牧場」
1.量より質。持続型農業目指す
1976年から3年間、中野牧場の年間出荷乳量(個人)は十勝管内1位を記録。89年には学校廃材でフリーストール牛舎を建設するなど、気鋭の酪農経営を行っていた。現在はどうか。昨年1月、代表取締役に就任した3代目の中野大樹さん(36)に聞くと、「人も牛も無理をしない方針。生産量にはこだわらず、乳質を重視している」の答え。
父繁実さんの代から30年近く、土壌研究グループ「北海道SRU」のメンバーとして、土を健康に保つ研究に取り組んできた。自然の生態系を崩さず、共存する持続型農業。これも中野牧場が目指す未来だ。
2.牛への負担減で乳質と繁殖率向上
牛を大切に飼う姿勢も特徴的だ。できるだけ牛にストレスを与えないよう夏季は放牧する。また数年前からは牛を消耗させないよう、少しずつ配合飼料を減らして自家製粗飼料を増やしてきた。「すると牛の繁殖率が高まり寿命も延びた。だから牛が増え過ぎるのが悩み」と、うれしい悲鳴を上げている。
こうした土作りと粗飼料作り。牛にストレスや負担を掛けない飼育の仕方。それぞれの効果か、中野牧場の生乳は乳脂肪分が高く、年間平均4.2%を維持するほどだ。この乳質がよつ葉乳業の目に留まり、2018年春からは「特選4.0牛乳」の原料となっている。「乳質・乳成分が認められたことはうれしかった。昨年夏も特選基準値をクリアし続けることができ、自信につながった。今年も責任を持ちながら、量より質でやっていきたい」と中野代表。
3.同友会での活動を生かし、経営理念を作成
同友会には代表取締役となった18年1月、「自分に足りないものを知り、先輩経営者から学びたい」と考えて入会した。1年目は経営指針委員会の経営理念グループで活動。「経営理念の必要性と作成方法を理解できたのも同友会のおかげ。最近、中野牧場の経営理念も作成し、今はパネルの完成を待っている最中」と笑顔を見せる。
19年度はスタートアップ委員会に所属し、運営委員として新入会員のサポートをする他、農業経営部会の幹事に就く予定。「それぞれの場で得るものは多いはず」と期待を膨らませる。
4.200年後も、必要とされる牧場に
働きやすい牧場にすることも目標だ。「酪農イコール長時間労働のイメージを払拭するため、うちは1日8時間以上労働しないという就業規則を設けている。年間休日数は18年度で約90日。今後さらに増やしていきたい」と働き方改革に前向き。実際、中野牧場の社員定着率は高く、在籍する社員8人の勤務年数は長い。
今後は牛の増加対策のため牛舎の新設も考えている。しかしその大目的は利益追求ではなく地方創生のためだという。最後に今の思いを聞くと、「一生涯学び続けて、農業の素晴らしさを社員や世の人々に伝えたい。夢は、100年後、200年後も中野牧場が地域に必要とされて存在すること」。そう力強く語ってくれた。
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